纏頭てんとう)” の例文
小桜姫とレツドローズ嬢とは両派の名妓にして彼が一月の纏頭てんとうは二万円を下らずといふ。世人この地を称して楽園と呼びまた白魔窟と呼ぶ。
四百年後の東京 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
親王がた、大臣たちへのお贈り物、それ以下の人たちへの纏頭てんとうの品などもきわめてりっぱなものを用意させておいでになった。
源氏物語:42 まぼろし (新字新仮名) / 紫式部(著)
時に漸く夏日暮れんとし、笙歌しょうか数奏。豪勇ども各々纏頭てんとう、這うようにして帰った——
酒渇記 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
下男下女おちゃこ駕籠舁かごかき人力車夫等への纏頭てんとうにも思い切った額をはずんだ。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
纏頭てんとうの山を成しける夢の跡
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
腰結い役への贈り物、引き出物、纏頭てんとうに差等をつけて配られる品々にはきまった式があることではあるが、それ以上に派手はでな物を源氏は出した。
源氏物語:29 行幸 (新字新仮名) / 紫式部(著)
六条院からも多くの御贈り物があった。それは来会者へ纏頭てんとうに出される衣服類、主賓の大臣への贈り物の品々等である。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
使いへ出した纏頭てんとうもさまざまであったが、末摘花は東の院にいて、六条院の中のことでないから纏頭などは気のきいた考えを出さねばならぬのに
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
どちらでも纏頭てんとうに出すのはきまった真綿であるが、それらなどにも尚侍のほうのはおもしろい意匠が加えられてあった。
源氏物語:31 真木柱 (新字新仮名) / 紫式部(著)
薄紫の細長一領に、三重かさねはかまを添えて纏頭てんとうに出したのを使いが固辞して受けぬために、物へ包んで供の人へ渡した。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
纏頭てんとうは高級官人と皇子がたへは帝から、殿上役人と楽人たちへは姫宮のほうから品々に等差をつけてお出しになった。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
宮中から頭の弁が宣旨で来て、この日の派手はでな祝宴を管理した。纏頭てんとうの品々は中宮のお志で慣例以上の物が出された。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
小袿こうちぎを下に重ねた細長のなつかしい薫香たきもののにおいのんだのを、この場のにわかの纏頭てんとうに尚侍は出したのであるが
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
帰ろうとする導師を院は御前へお呼びになって、杯を賜わったりすることなども普通の仏名式の日以上の手厚いおねぎらいであった。纏頭てんとうなども賜わった。
源氏物語:42 まぼろし (新字新仮名) / 紫式部(著)
舞台の左右に奏楽者の天幕ができ、庭の西と東には料理の箱詰めが八十、纏頭てんとう用の品のはいった唐櫃からびつを四十並べてあった。午後二時に楽人たちが参入した。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
手紙の使いは派手はで纏頭てんとうを得た。そして頭中将が饗応きょうおうの役を勤めたのであった。始終隠して手紙を届けに来た人は、はじめて真人間として扱われる気がした。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
それきりまたうとくなってしまうのもよろしくないと思って、纏頭てんとう用として女の衣裳いしょうを幾組みも贈った。
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
頭中将や弁の少将などにも目だつほどの纏頭てんとうでなく、細長とか小袿こうちぎとかを源氏は贈ったのであった。
源氏物語:32 梅が枝 (新字新仮名) / 紫式部(著)
また杯が多く巡った。ここには纏頭てんとうにする物が備えてなかったために、源氏は大井の山荘のほうへ
源氏物語:18 松風 (新字新仮名) / 紫式部(著)
美しい纏頭てんとうの衣類を肩に掛けているので後朝ごちょうの使いであることを人々は知った。いつの間にお手紙は書かれたのであろうと想像するのも快いことではないはずである。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
源氏は使いへ末摘花の出した纏頭てんとうのまずいのを見て、機嫌きげんの悪くなったのを知り、使いはそっと立って行った。そしてその侍は自身たちの仲間とこれを笑い話にした。
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
いずれにもせよ羞恥しゅうちを感ぜずにはいられないことであったから、返事の書きようもなく姫君の困っている間に、纏頭てんとうを辞する意味で使いのおもだった人は帰ってしまった。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
この日は右近衛府うこんえふの下僚の招宴をして纏頭てんとうを出すならわしであったから、自邸でとは言っていたが、近くに中の君の悩んでいる二条の院があることで少し躊躇ちゅうちょしていると
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
音楽の遊びがあって贈り物に纏頭てんとうに六条院にのみよくする華奢かしゃが見えた。多数の縉紳しんしんは皆きらびやかに風采ふうさいを作っているが、源氏に準じて見えるほどの人もないのであった。
源氏物語:23 初音 (新字新仮名) / 紫式部(著)
夜になって終わるころにはもう何もよく見えなかった。左近衛府さこんえふ舎人とねりたちへは等差をつけていろいろな纏頭てんとうが出された。ずっと深更になってから来賓は退散したのである。
源氏物語:25 蛍 (新字新仮名) / 紫式部(著)
自邸のような気のする二条の院でこの催しをすることにした。七僧の法服をはじめとして、以下の僧へ等差をつけて纏頭てんとうにする僧服類をことに精撰して夫人は作らせてあった。
源氏物語:41 御法 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ちょうははかないふうに飛びって、山吹がかきの下に咲きこぼれている中へ舞って入る。中宮のすけをはじめとしてお手伝いの殿上役人が手に手に宮の纏頭てんとうを持って童女へ賜わった。
源氏物語:24 胡蝶 (新字新仮名) / 紫式部(著)
宰相の中将が来た使いを捜させ饗応きょうおうした。紅梅がさね支那しなの切れ地でできた細長を添えた女の装束が纏頭てんとうに授けられた。返事も紅梅の色の紙に書いて、前の庭の紅梅を切って枝に付けた。
源氏物語:32 梅が枝 (新字新仮名) / 紫式部(著)
身にしむこともおもしろさもきわまるかと思われるころに、「陵王りょうおう」が舞われて、殿上の貴紳たちが舞い人へ肩から脱いで与える纏頭てんとうの衣服の色彩などもこの朝はただ美しくばかり思われた。
源氏物語:41 御法 (新字新仮名) / 紫式部(著)
京へ移って行った日に入り用な纏頭てんとうに使う品、それらもあまり大形おおぎょうには見せずこまごまと気をつけてそろえて届けられたのである。何かのおりには親身な志を見せる薫を喜んで、女房たちは
源氏物語:50 早蕨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
一般の人への纏頭てんとうの品々は夫人が力を傾けて用意していることであった。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
裳着の式日の贈り物、高官たちへの纏頭てんとうの衣服類の製作を手分けして各夫人の所でしているかたわらで、またそれぞれえらび出した香の原料の鉄臼かなうすでひかれる音も立って忙しい気のされるころであった。
源氏物語:32 梅が枝 (新字新仮名) / 紫式部(著)
とお言いになり、しょうの笛を吹いた子に酒杯をお差しになり、御服を脱いでお与えになるのであった。横笛の子には紫夫人のほうから厚織物の細長にはかまなどを添えて、あまり目だたせぬ纏頭てんとうが出された。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
慣例の纏頭てんとうである綿を一袋ずつ頭にいただいて帰った。
源氏物語:23 初音 (新字新仮名) / 紫式部(著)
御使いは杯を賜わり、御纏頭てんとうをいただいた。
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
使いには纏頭てんとうが出された。
源氏物語:50 早蕨 (新字新仮名) / 紫式部(著)