統御とうぎょ)” の例文
またここへの書状には、それの知らせと共に、「都のことは、一切心配におよばぬ、ひたすら千寿王の守護と、士卒の統御とうぎょに心せよ」
まつりごとをなす人とか、教育をする人とかは無論、すべて多くの人を統御とうぎょしていこうと云う人も無論、個人が個人と交渉する場合にってすら型は必要なものである。
中味と形式 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その子分として用いた者が多くは無学の熊公くまこう八公はちこうるいであったから、かくのごとき紋切形コンヴェンションもうけ、これによりて統御とうぎょ便べんはかったのも、あるいは止むを得なかったことであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
もしそれ虚妄きょもうなるがごとき、なんぞ信を開明の民に得るにたらん。いわゆる神教政治なるもの、その実は神教にあらずして、愚民を哄騙こうへんするの術なり。蛮王、一詭道きどうをもって万民を統御とうぎょせんとほっす。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
そうなるともう葉子は自分を統御とうぎょする力を失ってしまっていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
の部下を統御とうぎょせり。また彼の部下ヘ
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これをみても、宮方全般の陣営には、朝廷への忠誠の声やら反尊氏の意気はあっても、司令一本の統御とうぎょに欠けていた点があったのはいなみがたい。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど、その総括そうかつは、飽くまで自己のになければならないのである。彼の原則として、もしその統御とうぎょおかす者などあれば、断じてゆるす彼ではない。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かみおんみずから、親しく諸政をみそなわす儀は、うごかざるまつり大本たいほんとして、その下における武門の統御とうぎょのみを、尊氏におゆだねあらせられるぶんには」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、義貞を追ッかけて行った味方が、騎虎きこにまかせて都へ乱入などしたら始末におえぬ。先に、制止はしておいたが、一将の伝令などでは統御とうぎょがつくまい。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは若さというものだけだ。この父に似ず、何よりは意志が弱い。決断力もにぶく、人をめいにはすこし欠けておる。わけていまの武士どもを統御とうぎょするのは容易でないことを
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、そういう荒武者の統御とうぎょには、上杉憲房を副将の資格で上に据えてあるのだった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むしろ少数でも、一族一体を基盤とする金鉄の本塁ほんるいを奥河内のけんに築いて、築塁ちくるいが成ッたら、すぐさまそこへ天皇を迎えて、思うざまな統御とうぎょを取ろうとするものにほかならなかった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)