給仕ボーイ)” の例文
それで彼は、彼のめちゃな言葉を聞いて給仕ボーイ嘲笑ちょうしょう的な様子をしたのを、ひどく気に病みながらも、いて平気でいようとつとめた。
それから白い亡霊……あれは例の支那人給仕ボーイが化けたのだが、あれがその記録を取外し、朝になっての三人の外人に給仕をする時
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
給仕ボーイ頭くらいの者に入れ知恵されて持って来た話というのは、たかだか気位の高い妻の讒訴ざんそをして愚痴をこぼすくらいのものだろうと
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
のりのついた真白い、上衣うわぎたけの短い服を着た給仕ボーイが、「とも」のサロンに、ビール、果物、洋酒のコップを持って、忙しく往き来していた。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
すると勝手のあがくちの方から、給仕ボーイが白い皿を二つ持って入って来て、それを古いのと引きえに、二人の前へ置いて行った。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そしてスープが出た後でようやく、頸飾をつけた女中なり、ダブダブの上衣を著た給仕ボーイなりが、永年その家に伝わる燭台に脂蝋燭をつけて持って来る頃
「こら、その給仕ボーイ、そこにいちゃいかん! 料理番コックのところへ行って何か手伝いをしろ。」と呶鳴どなった。
東亜局長がドアに手をかけてひっぱろうとすると、扉はひとりでに開いて入口でばったり給仕ボーイにあった。彼は、あわててお叩頭じぎをして、盆に乗せた名刺を差し出した。
鉄の規律 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
「じゃ誰よ、そこにいんのは? さっきから、かさこそ音をさせていて、給仕ボーイ?」
一週一夜物語 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
山木は慌しく踏絵の袖を引き、キョトキョトと給仕ボーイのいる方をぬすみみながら
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
伊藤青年は倒れている給仕ボーイ(それは実は支那人であった)の脾腹をひとつ、がんと蹴っておいて、物置部屋の方へ駈けだした。
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
頤紐あごひも金釦きんボタン給仕ボーイを通じさせるとはたして私の予感どおり、「唯今大使館のお客が見えているものですから、しばらくお待ちを願います」
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
むこうたなに載せた誰やらの帽子が、傾いたまま、山高のいただきふるわせている。給仕ボーイが時々室内を抜ける。大抵の乗客は向い合せに顔と顔を見守っている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
実際、その言葉がおわらぬうちに、給仕ボーイが捜査課宛の電報をもってきた。
鉄の規律 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
給仕ボーイが出てきた。サロンの中は煙草の煙でムンムンしていた。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
不思議なことがあるもんだと思っているとやがて酒のお代りと同時に給仕ボーイがはたして、パーズレイの名刺を取り次いできた。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
伊藤青年はネクタイを結びながら、給仕ボーイの支度する珈琲コーヒー卓子テーブルに向って掛けた。——あまり機嫌の好い顔つきではない。
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
敬太郎は早く勘定を済ましておくにくはないという気になって、早速給仕ボーイを呼んでビルを請求した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ただ覚えているのはいつものように守衛たちが……昇降機エレベーターガールたちが……使い走りの給仕ボーイたちが……そしてここへ来るまでの幾つかの階段や廊下で
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
白服の給仕ボーイが彼を案内すべく上り口に立っているのに気がついた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ついに事務長パーサーらしい制服ユニフォームの上級士官が現れて、その取りしで船の給仕ボーイが私たちの携えてきた贈物一切を両腕に抱えて、ひとまず船長室まではこんで行った。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「うん。——給仕ボーイ紅茶を持って来い」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「よろしい、ここへ通してくれ」と私は新聞を下に置いたが、給仕ボーイに案内されてはいって来た男を見ると、さすがにっと心の中で叫ばずにはいられなかった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
外国船の給仕ボーイに売られて……が、船の待遇が悪くて虐待されるのであっちへ着きこっちで積荷して、流れ流れてアドリア海のスプリトという、小さな港で木材を積み込んだ時に、到頭脱走して
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)