細身ほそみ)” の例文
細身ほそみ造りの大小、羽織はかまの盛装に、意気な何時いつもの着流しよりもぐっとせいの高く見える痩立やせだち身体からだあやういまでに前の方にかがまっていた。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その時私の指してる大小は、脇差わきざし祐定すけさだの丈夫なであったが、刀は太刀作たちづくりの細身ほそみでどうも役に立ちそうでなくて心細かった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
仕止師マタドールは右手に細身ほそみつるぎ、左手に赤布ムレエータを拡げ、牛の前に突っ立ち、やっ! とばかしに襟筋に剣を突っ立てたがなかなか「突っ通し」というわけにはゆかない。
ところが、果然かぜんその直覚ちょっかくはあべこべで、手に手に細身ほそみの刀、小太刀こだちを持ち、外に待ちかまえていた者たちは、やかた武士ぶしとも思われない黒の覆面ふくめん、黒のいでたち。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無禄無扶持むろくむふちになった小殿様たちは、三百年の太平逸楽いつらくおごって、細身ほそみの刀も重いといった連中である。
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
羽二重はぶたへ小袖羽織こそでばおり茶宇ちやうはかま、それはまだおどろくにりないとして、細身ほそみ大小だいせうは、こしらへだけに四百兩ひやくりやうからもかけたのをしてゐた。こじりめたあつ黄金きん燦然さんぜんとして、ふゆかゞやいた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
陸奧紙みちのくがみに包まれし細身ほそみの剃刀こそ出づるなれ。
そぞろごと (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
細身ほそみの秒の指のおと、片言かたことまじりおぼつかな
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
たぐひもあらぬ細身ほそみなり。
身に帯びるそれもく軽い細身ほそみの大小よりほかには物の役に立つべき武器とては一ツもなく、日頃身に代えてもと秘蔵するのは古今の淫書いんしょ稗史はいし、小説
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ある日、わしの荘園におった闘牛師トレアドールの仕出しが喰らい酔いよって、何を思ったか細身ほそみをぬいてそこらじゅう刺し廻る、ピストルをぶっ放す、どうも危なくて近寄れません。
細身ほそみの秒の指のおと、片言かたことまじりおぼつかな
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)