紫宸殿ししいでん)” の例文
なんでも夜中よなかすぎになると、天子てんしさまのおやすみになる紫宸殿ししいでんのお屋根やねの上になんともれない気味きみわるこえくものがあります。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
御子三位さんみの中將殿(維盛)は歌道かだうより外に何長なにちやうじたる事なき御身なれば、紫宸殿ししいでんの階下に源家げんけ嫡流ちやくりう相挑あひいどみし父のきやうの勇膽ありとしも覺えず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
緋羅紗ひらしゃを掛けた床の雛段には、浅草の観音堂のような紫宸殿ししいでんいらかが聳え、内裏様だいりさまや五にんばやしや官女が殿中に列んで、左近さこんの桜右近うこんの橘の下には、三人上戸じょうご仕丁じちょうが酒をあたゝめて居る。
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いつか彼は、文徳殿の庭から紫宸殿ししいでんのほとりへ来てたたずんでいた。禁門のいずこでもとがめられはしなかった。けれど深殿しんでんのおもなる所はみなじょうがおりているので立入ることはできない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海上の船から山中のいおり米苞こめづとが連続して空中を飛んで行ってしまったり、紫宸殿ししいでん御手製おてせい地震でゆらゆらとさせて月卿雲客げっけいうんかくを驚かしたりなんどしたというのは活動写真映画として実に面白いが
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
するうちそれは、なんでも毎晩まいばんおそくなると、ひがしほうからひとむらのくろくもしてて、だんだん紫宸殿ししいでんのお屋根やねの上におおいかかります。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
天子は、紫宸殿ししいでん出御しゅつぎょして、この日、公卿百官の朝賀をよみせられた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するうちだんだん紫宸殿ししいでんのお屋根やねの上がくらくなって、大きなくろくもがのしかかってたことが闇夜やみよにも見分みわけがつくようになりましたから、ここぞとねらいをさだめて
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)