かん)” の例文
棠園、名はかん、通称は総右衛門、此年五十七歳であつた。十余年前の相識と云ふからは、文化初年の友であつただらう。西脇は多く聞かぬ氏族である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
手紙はかんでわからないけれど栄輔君の家産を蕩尽したことにも、何か一つの物語がありさうにKには思はれた。
田舎からの手紙 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
要するに彼は、し此時だけにもしろ、味が薄いが、かんにして要を得た市民的生活が氣に適ツたのであつた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
かんに過ぎて解しかぬる点もあれど昔は歳のはじめ即正月元旦を以て春の初となしたりとの意ならん。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
なぜ? と眼八がほじくると理由わけかんにして明、——今、町の辻々に伏せておいた密偵のひとりが、この間から行方の知れなかった大勘がこッそりと帰ってきて、何用か
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゾラはかつて文体を学ぶに、ヴオルテエルのかんむねとせずして、ルツソオのくわむねとせしを歎き、彼自身の小説が早晩古くなるべきを予言したる事ある由、善くおのれを知れりと云ふべし。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「先生、あのがけのどご色かわってるのぁ何してす。」かんだ。崖の色か。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
本家では桂山けいざん、名は元かん、字は廉夫れんふが、抽斎の生れた文化二年には五十一歳、その子柳沜りゅうはん、名はいん、字は奕禧えききが十七歳、末家では茝庭さいてい、名は元堅げんけん、字は亦柔えきじゅうが十一歳になっていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かんにして練磨を尊ぼう。また軍紀が第一だ。諸子はまた、もし予に過ちあったときは遠慮なく善言してくれい。それが忠誠である。……以上のことを鉄心一体に持てば、いつか今日のはじ
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、意味はかんだが、確信ありげに、帝の決行を励ましているものだった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、かんを通じてきた。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)