節季せつき)” の例文
莞爾くわんじとしてきながら、よし/\それもよし、蒲鉾かまぼこ旅店はたごや口取くちとりでお知己ちかづき烏賊いか鹽辛しほから節季せつきをかけて漬物屋つけものやのびらでとほり外郎うゐらう小本こほん物語ものがたり懇意こんいなるべし。
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なでいや然樣さやう云るゝと實に面目めんぼく次第もなし併し年中御世話にばかりなり其上節季せつき師走しはす押迫おしつめての金の才覺さいかくあまり心なしに御話おはなしも出來ぬゆゑよんどころなく淺草田町の利兵衞と云國者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「親分、きっとそうですよ。女房子にょうぼこの手前があるから、どっかの二階へでもお熊を預けて置くつもりで、兄きの所へその相談に来たのかも知れませんぜ。節季せつき師走しわす暢気のんきな野郎だ」
半七捕物帳:61 吉良の脇指 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
とはいえ、季節は折柄養蚕上まぶしに際し、百姓は働けども働けども忙しい。しかも、働き盛りの青年が、酒をあおって節季せつきを等閑視したとあっては、荒神さまに申しわけがたたぬであろう。
しゃもじ(杓子) (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
斯る貧窮ひんきうの其中にお菊が手一ツにて今日としの翌日あすと暮せど追々おひ/\かさなる借金に切なき事も多からんに孝行深きよめなれば苦敷くるしき顏も見せねども最早もはや節季せつきに押し移ればさぞかし苦勞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
よろこび心の中には此位このくらゐなら節季せつき師走しはすの中を來らず共能にと思ひけるゆゑ兄さん御前は夫でよからうが私は道々も明暮あけくれお前の事のみあんじられて斯して態々わざ/\くるからはせめては死目しにめ逢度あひたしと思ひて何なにか苦勞くらう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)