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秉
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と
ふりがな文庫
“
秉
(
と
)” の例文
然りとすれば一たび筆を通俗の小説に
秉
(
と
)
らんとするもの、淫事を他にしてまた何をか描かんや。『源氏物語』は我国淫本の
権輿
(
けんよ
)
なり。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
一天の
景
(
かげ
)
は、寒く、こころを
憑
(
の
)
り
秉
(
と
)
つて、歎きの
科
(
しぐさ
)
を強ひる。——わたしはその群る虫に、その虫の歌に、汎として
泛
(
う
)
き流れるサモス派の船である。…
雪
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
夜
(
よる
)
、
燭
(
しょく
)
を
秉
(
と
)
って遊宴中、腰掛けを
聯
(
つら
)
ねた上に数猴一列となって各の手に
炬火
(
かがりび
)
を捧げ、客の去るまで身動きもせず、けだし盗人の昼寝で当て込みの存するあり
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
最後に猿等を圏の中に入れ、大いなる書籍を取り出し、一匹の猿を卓にしてそれを載せ、他の猿には炬を
秉
(
と
)
らしむ。さてファウストを招きて圏の中に入らしむ。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
そこへ昔命に懸けて愛した男を、冷酷なきょうだいに夫にせられて、不治の病に体のしんに食い込まれているエルラが、
燭
(
しょく
)
を
秉
(
と
)
って老いたる恋人の檻に這入って来る。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
シンフォニイの最後の拍子に連れて、
序曲
(
プロロオグ
)
を唱う者登場する。そのうしろに
炬火
(
たいまつ
)
を
秉
(
と
)
る
小厮
(
こもの
)
たち。
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
そのとき丁度電話がかかって来たので、久慈は裸体のままふと手近の受話器を
秉
(
と
)
った。矢代は久慈に代ろうとしたが、久慈はもう、「ええ、そうです、僕矢代。」と返事をしていた。
旅愁
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
お春は三人の
側
(
そば
)
に
侍
(
じ
)
して、
零
(
こぼ
)
れる愛嬌を見せ
乍
(
なが
)
ら、
華奢
(
きゃしゃ
)
な手に
瓶子
(
ちょうし
)
を
秉
(
と
)
るのでした。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
燭を
秉
(
と
)
って、湯殿へ通うと、空には露が一杯で、十一月頃の冷たさが、ひしひしと肌に迫る、そうして凸凹のないところは、ないくらいな山の中にも、梓川が、静かな平坦な大道路となって
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
燭を
秉
(
と
)
るということは、近頃は停電でもないとあまり見られなくなった。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
気遣う様子更に無し、
去
(
さ
)
れど目科は落胆せず、倉子に
燭
(
しょく
)
を
秉
(
と
)
らせて前に立たせ余を
背
(
うしろ
)
に従えて、穴倉の底まで下り行くに、底の片隅に
麦酒
(
びいる
)
の瓶あり少し離れて是よりも上等と思わるゝ酒類の瓶を置き
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
燭
(
ひ
)
を
秉
(
と
)
りて見し
短歌集 日まはり
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
されば今日の男女に喜ばるべき通俗小説をものせんとせば、筆を
秉
(
と
)
るに先んじてまづ今日の
下情
(
かじょう
)
に通暁せざるべからざるなり。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
炬火を
秉
(
と
)
る人々も亦その後より去る。プロセニウムはしばし暗きままに止る。
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
ギヨオテの三家を世相派の實際主義を
秉
(
と
)
るものに列せしは、ゴツトシヤルがおなじ三家にジヤン・ポオルを加へて實を役する理想主義、即ち眞の實際主義を秉るものとせしと、殆符節を合する如し。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
マルガレエテ燈を
秉
(
と
)
りて登場。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
さりげない
火種
(
ひだね
)
を
秉
(
と
)
りに。
雪
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
手紙には必ず
候文
(
そうろうぶん
)
を用いなければならなかった時代なので、その頃の女は、
硯
(
すずり
)
を引寄せ筆を
秉
(
と
)
れば、文字を知らなくとも、おのずから候可く候の調子を思出したものらしい。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
当時の事は既に「下谷の家」と題した一小篇に記述した。雑誌『
三田
(
みた
)
文学』の
初
(
はじめ
)
て刊行せられた年の同誌に掲げんがため筆を
秉
(
と
)
ったのであるから、これさえ早く既に十四、五年を過ぎている。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
いやしくも筆を通俗小説に
秉
(
と
)
らんとするものの為すべき所にあらざるや論を
俟
(
ま
)
たず。僕今芸者の
長襦袢
(
ながじゅばん
)
を
購
(
あがな
)
はんがために、わが生涯の醜事を叙し出して通俗小説に代へ以て売文の
貲
(
し
)
を
貪
(
むさぼ
)
らんとす。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
秉
漢検1級
部首:⽲
8画
“秉”を含む語句
秉燭
秉炬
秉穂録
程秉
劉秉忠
河東秉五郎
秉之助
秉公
秉公持平
秉彝録
秉忠
秉払
秉炬法語
秉燭譚
竹秉炬
遺秉