神祇じんぎ)” の例文
熊野牛王くまのごおうの誓紙には、日本国中の大小神祇じんぎ八幡大菩薩はちまんだいぼさつ愛宕山権現あたごやまごんげん、ところの氏神にも、違背いはいあれば御罰をこうむらんと明記してある。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神祇じんぎの歌といえば千代の八千代のと定文句きまりもんくを並ぶるが常なるにこの歌はすっぱりと言いはなしたるなかなかに神の御心にかなうべく覚え候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
無季の句のうちに神祇じんぎ釈教しゃっきょう、恋、無常、疾病、羈旅きりょ等があって、人間生活を縦横に謡うが、それを点綴てんていして季の句が過半数を占めておる。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
半蔵は半蔵で、『神祇じんぎ宝典』や『類聚日本紀るいじゅうにほんぎ』などをえらんだ源敬公以来の尾張藩主であるということが、彼の心をよろこばせたのであった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
長、短、長短、合計三十六本の線が春夏秋冬神祇じんぎ釈教しゃっきょうこい無常むじょうを座標とする多次元空間に、一つの曲折線を描き出す。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
物名や大歌所御歌などは後ではなくなったり、神祇じんぎ釈教しゃっきょうの部が立てられたりしたが、四季・恋・雑の三大部は『古今集』この方、勅撰集の根幹となった。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
詳しいことは屋敷へ来た折に云ひませうが、武士たるものが町奴とかの真似をして、白柄組の神祇じんぎ組のと、名を聞くさへも苦々にが/\しい。喧嘩がなんで面白からう。
番町皿屋敷 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
式亭三馬しきていさんばが何年か前に出版した滑稽本の中で、「神祇じんぎ釈教しやくけう、恋、無常、みないりごみの浮世風呂うきよぶろ
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
勅使、祭主神祇じんぎ権大副大中臣定高ごんのたいふおおなかとみのさだたかは、近江国甲賀こうがで病を得、伊勢の離宮につくと間もなく死んだ。
御親おんみずから国内の主要なる神祇じんぎを御祭りなされる式典として、疑う者もなかったようだが、もしそれならば是は朝廷の御事業であって、個々の稲耕作者たちの問題でなく、嘗の祭の一般共通性などは
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
今、どこの路地で無頼漢が神祇じんぎの礼を交していたとか、或は向の川岸で怪し気な女にそでかれたとか、かつてどこそこの店にいた女給が今はどこそこの女主人おんなあるじになっているとか云うたぐいのはなしである。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
神祇じんぎの歌といへば千代の八千代のと定文句きまりもんくを並ぶるが常なるにこの歌はすつぱりと言ひはなしたる、なかなかに神の御心みこころにかなふべく覚え候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
右の条々、もし偽りこれあるにおいては、日本国大小の神祇じんぎ、殊に八まん大菩薩だいぼさつ愛宕白山摩利支尊天あたごはくさんまりしそんてん、べつして氏神うぢがみの御罰、深重しんちようまかりかうむるべきもの也。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここでは神祇じんぎ釈教恋無常の活躍は許されない。テンポで言えばまずアンダンテのような心持ちである。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
連句の変化を豊富にし、抑揚を自在にし、序破急の構成を可能ならしむるために神祇じんぎ釈教恋無常が適当に配布される。そうして「ぞうの句」が季題の句と同等もしくは以上に活躍する。
俳諧の本質的概論 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
天地の神祇じんぎに誓って、自分らの目的は、他人にもらすまいと約していますので、それが何かは、たとえ沢庵様であろうと、語るわけに参りませんが、お師匠さまの武蔵様が、宝蔵破りの冤罪えんざいをきて
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)