目障めざわ)” の例文
世間にはこの目標を目障めざわりだと言って見まいとするものもあるが、自分にはどうしても見えると言う方が正直としか思われない。
僕の失恋もにがい経験だが、あの時あの薬缶やかんを知らずに貰ったが最後生涯の目障めざわりになるんだから、よく考えないと険呑けんのんだよ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし命賭いのちがけでもこれを取払わねばならぬというほどの必要に迫られているわけでもない。単に邪魔だとか目障めざわりだとかいうに過ぎないのである。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
弟や妹が自分の知らない英語ばかりこそこそ勉強しているのを彼れはさも目障めざわりでならぬといったような口調で話した。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
「イヤうどんは要らない、今ここへ高貴なお方が見えるのだから、屋台をあっちへ引っ張って行っておくれ、目障めざわりだ」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時とすると目障めざわりでもあったが、しかし加世子がいなかったら、神経の疲れがちな庸三は、ぎごちないその態度で、どんなに客を気窮きづまらせたか知れなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
実際自分はそれらのものを全く欠ける青年を、青年として愛することは困難を感ずる。またかなりに目障めざわりな外国語の使用等も学生シューレルとしての気分を保存するためにあえてそのままにしておいた。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
真黒な「くろも」というものを着附けていたので目障めざわりではなかった。
亡び行く江戸趣味 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
孝「喧嘩を致したのではありません、お使い先で宮邊みやべ様の長家下ながやしたを通りますと、屋根からかわらが落ちて額にあたり、斯様かよう怪我けがを致しました、悪い瓦でございます、お目障めざわりに成って誠に恐入おそれいります」
きんは、ふっと、気にもかけなかった女中の若さが目障めざわりになった。
晩菊 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「そうか。では、北条殿におねがいすれば当日、どこぞお目障めざわりにならぬ場所で、ご式の模様が拝めようか」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの女が島田などに結うのは目障めざわりだね。」笹村はこれまでよく深山に女の苦情を言った。夜家を明けて、女が朝はやく木戸をこじ明けて入って来ることも、笹村の気にくわなかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
第一積極的と云ったって際限がない話しだ。いつまで積極的にやり通したって、満足と云う域とか完全と云うさかいにいけるものじゃない。むこうひのきがあるだろう。あれが目障めざわりになるから取り払う。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「わかった。——じゃが、将軍様には今し方作事場さくじばを一巡遊ばして、あれなるお休み所の丘に、只今床几しょうぎをおすえ遊ばしておられるところだ。お目障めざわりだ、ひかえろ」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
懐手ふところでをして盤を眺めている方がはるかに気楽である。それも最初の三四十もくは、石の並べ方では別段目障めざわりにもならないが、いざ天下わけ目と云う間際まぎわのぞいて見ると、いやはや御気の毒な有様だ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
几帳面きちょうめん藩邸はんていの中に、たった一人、ひどく目障めざわりな男が、この頃、御用部屋にまごまごしている。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、何か、目障めざわりのとがでも申しつかるかと、おそるおそる答えたところ、信長はうなずいて
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お目障めざわりになりましたか」