田圃側たんぼわき)” の例文
私は本町の裏手から停車場と共に開けた相生町あいおいちょうの道路を横ぎり、古い士族屋敷の残った袋町ふくろまちを通りぬけて、田圃側たんぼわきの細道へ出た。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
どこの田圃側たんぼわきつてても、どこのはたけすみつてても、子供こどもといふ子供こどもあつまつてるところでは、そのあそびがはじまつてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
更に小諸町裏の田圃側たんぼわきへ出て見ると、浅々とえ出た麦などは皆な白く埋もれて、岡つづきの起き伏すさまは、さながら雪の波の押し寄せて来るようである。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
つて、近所きんじよ子供こども手造てづくりにしたたこげにます。田圃側たんぼわきれたくさなかには、木瓜ぼけなぞがかほしてまして、あそまはるにはたのし塲所ばしよでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
蟋蟀こおろぎなどの啼出なきだした田圃側たんぼわき、それから柴車だの草刈男だのの通るさびしい林の中などを思出していた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
裏町や、小路こうじや、田圃側たんぼわきの細い道なぞをえらんで、勝手を知った人々は多くったり来たりする。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
途中で捨吉が振返って見た時は、まだ兄妹は枯々とした田圃側たんぼわきに立って見送っていてくれた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その田圃側たんぼわきは、高瀬が行っては草をき、土の臭気においを嗅ぎ、百姓の仕事を眺め、畠の中で吸う嬰児あかんぼの乳の音を聞いたりなどして、暇さえあれば歩き廻るのを楽みとするところだ。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
根津の丘、姫子沢の谷、鳥が田圃側たんぼわきなぞに霜枯れた雑草をみ乍ら、十一月上旬の野辺に満ちた光を眺めて佇立たゝずんだ時は、今更のやうに胸を流れる活きた血潮の若々しさを感ずる。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
僕が田圃側たんぼわきなぞにころがっていると、向の谷の方から三脚を持った人がニコニコして帰って来る——途次みちみち二人で画や風景の話なぞをして、それから僕がSさんの家へ寄ると、写生を出して見せてくれる
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私は小諸の町裏にある田圃側たんぼわきに身を置いて居るやうな気がする。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)