生麦なまむぎ)” の例文
旧字:生麥
不幸にも、先年東海道川崎駅に近い生麦なまむぎ村に起こったと同じような事件が、王政復古の日を迎えてまだ間もない神戸三宮さんのみやに突発した。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
雄藩ブロックの盟主島津三郎一行は使命を果しての帰途生麦なまむぎに英人を斬って攘夷実行の先頭をきったが、この生麦事件の秘密は
尊攘戦略史 (新字新仮名) / 服部之総(著)
相州の生麦なまむぎというところで、薩摩の侍が毛唐を斬って、それから、薩州様と毛唐とが戦争をした。長州でも負けない気になって、下関で毛唐といくさをした。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それは、ちょうどこのとき、日本にっぽん生麦なまむぎじけんがおこったというらせが、フランスへつたえられたからでした。
生麦の報道到来して使節苦しむれから露西亜ロシアを去て仏蘭西フランスに帰り、いよ/\出発と云うその時は生麦なまむぎおお騒動
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
子安こやす生麦なまむぎ鶴見つるみ、川崎——、浦づたいの道はそこで切れて、六ごう川の渡舟わたし——、乗合いの客はこんでいた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世間は物騒な最中で、井伊様がお殺されなすってから二年目、生麦なまむぎで西洋人が斬られたと云う年であった。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
こんなこととは、燁子さんの兄さんの柳原伯が、わたくしの母をわざわざ横浜の手前の生麦なまむぎまでたずねられて、続稿を、やめさせてくれまいかと頼まれたのだった。
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「友さんはらわたをおいてきねえ。」婆さんの方でない、安達ヶ原の納戸でないから、はらごもりをくのでない。松魚かつおだ、鯛だ。烏賊いかでも構わぬ。生麦なまむぎあじ、佳品である。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして、その間、島津久光の家来が横浜郊外の生麦なまむぎでイギリス人を斬つたり、浪士たちが品川御殿山の外国公使館を焼いたり、イギリス船が下関や鹿児島を砲撃したやうな事件も起つた。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
御承知でもございましょうが、あのお徳という女は生麦なまむぎざいの生まれでございまして、十七の年からわたくしのうちへ奉公にまいりまして、足かけ五年無事に勤めて居ります。至って正直なので、家でも目を
半七捕物帳:20 向島の寮 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ちょうど、生麦なまむぎを通るころ、沛然はいぜんと豪雨が降り出した。
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ずっと以前にこの旧藩主が生麦なまむぎ償金事件の報告を携えて、江戸から木曾路を通行されたおりのことは、まだ半蔵の記憶に新しい。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
生麦なまむぎの事件でござんさあ、薩摩っぽうが勇気凜々りんりんとして、毛唐二三人を一刀に斬って捨てたのはまあ豪勢なもんだとして、ところでその尻拭いは誰がします
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
外国人がいこくじんをおいはらえという人々ひとびとは、ちょっとしたことがあると、すぐ外国人がいこくじんをきりころすようならんぼうをしました。生麦なまむぎじけんもその一つで、これはをひきました。
前者の例は生麦なまむぎ薩摩さつまの武士がイギリス人を斬った、いわゆる生麦事件に代表されるものであり、後者はたとえば対馬つしまが占領されたとき最後まで反抗した対馬の住民であった。
黒船来航 (新字新仮名) / 服部之総(著)
生麦なまむぎにかくれているとつたえられた。鎌倉に忍んでいると伝えられた。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
正体のない島田を生麦なまむぎ立場たてばまで送ったと云うのである。
半七捕物帳:59 蟹のお角 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
過ぐる文久年度の生麦なまむぎ事件以上ともいうべき外国関係の大きなつまずきが、この不安な時の空気の中に引き起こって来た。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その月の八日はかねて幕府が問題の生麦なまむぎ事件でイギリス側に確答を約束したと言われる期日であり、十日は京都を初め列藩に前もって布告した攘夷の期日である。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これはいずれ生麦なまむぎ償金授与の事情を朝廷に弁疏べんそするためであろうという。この仙台の家中の話で、半蔵は将軍還御かんぎょの日ももはやそんなに遠くないことを感知した。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それらの艦隊がややもすれば自由行動をも執りかねまじき態度を示していたことを見のがしてはならない。それにはいわゆる生麦なまむぎ事件なるものを知る必要がある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「さあ、最近に驚かされたと言えば、生麦なまむぎ事件ぐらいのものです。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)