生類しょうるい)” の例文
それを第三者が批評して「貴殿広き世界を三百石の屋敷のうちに見らるゝ故なり。山海万里のうちに異風なる生類しょうるいの有まじき事に非ず」
西鶴と科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
由なき理由を申し立てて、生類しょうるい憐れみの令を施行したのもその護持院隆光だったからです。——退屈男の口辺には自ずと微笑がほころびました。
さまざま工夫してみましたが、鮎もやはり生類しょうるい、なかなかすばしこく、不器用な私にはとても捕獲出来ず、そのような私のむだな努力の姿を里人に見つけられ
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
その生母や悪僧のげんれて——生類しょうるいおんあわれみ——などという悪法律をもって、人間を、犬猫以下におくようなことをしなかったら、これらの人間は、決して
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
屹度彼の頭上に落ちると覚期せねばならなかった。この街道かいどうの此部分で、今動いて居る生類しょうるいは彼一人である。雷がき者に落ちるならば即ち彼の上に落ちなければならぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
生類しょうるいを殺すことを慎み、畿内近国は浦々の猟漁りょうすなどりをいたさず、洛中にては魚鳥をひさぐ物売りの声も聞えないほどでござりましたが、関白殿は世の思わくをもお考えなさらず
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
出し組ばかりなるもあり、雲形波形唐草からくさ生類しょうるい彫物のみを書きしもあり、何よりかより面倒なる真柱から内法うちのり長押なげし腰長押切目長押に半長押、縁板えんいた縁かつら亀腹柱高欄垂木たるきます肘木ひじきぬきやら角木すみぎの割合算法
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
生類しょうるいおんあわれみ令”をすぐ思い出した。もし内匠頭が犬だったら、戌年生れの将軍や吉保は、憐愍れんびんのなみだを流してやむまいにと、へんな気もちがしてならなかった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雷はます/\はげしく鳴った。最早もう今度こんどは落ちた、と彼は毎々たびたび観念した。而して彼の心は却て落ついた。彼の心は一種自己に対し、妻に対し、一切の生類しょうるいに対する憐愍あわれに満された。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
山海万里のうちにはおのずから異風奇態の生類しょうるいあるまじき事にあらず、古代にも、仁徳にんとく天皇の御時、飛騨ひだに一身両面の人出ずる、天武てんむ天皇の御宇ぎょう丹波たんば山家やまがより十二角の牛出ずる、文武もんむ天皇の御時
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
新鋳しんちゅうの悪貨とスリ換えている経過からくりと、もう一つは、人間を畜生以下のものに規定した——生類しょうるいおんあわれみ令——と称するお犬様あつかいの二大悪政である。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
命をしても此帷幕の隙見すきみをす可く努力せずに居られぬ人をわらうは吾儕われらどん高慢こうまんであろうが、同じ生類しょうるいの進むにも、鳥の道、魚の道、むしの道、またけものの道もあることを忘れてはならぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
戌年いぬどしうまれの、将軍綱吉が、隆光や、桂昌院の献言をいれて、世の人間たちへ発令した、畜生保護令ちくしょうほごれい——いわゆる“生類しょうるいおんあわれみ”と称する稀代きだいな法律の厳行である。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)