生面せいめん)” の例文
何しろうでぱいのところを見せて、すくなくとも日本の洋畫界やうぐわかいに一生面せいめんひらかうといふ野心やしんであツたから、其の用意、其の苦心くしん、實にさん憺たるものであツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
月下の美人生面せいめんにしてわが名をる。馭者たる者だれか驚かざらんや。渠は実にいまだかつて信ぜざりし狐狸こりの類にはあらずや、と心はじめて惑いぬ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これらはもとより故意にこの新句法を造りし者、しかして明治の俳句界に一生面せいめんを開きし者また多くこの辺より出づ。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
世の常ならば生面せいめんの客にさえ交わりを結びて、旅のさを慰めあうが航海の習いなるに、微恙びようにことよせてへやのうちにのみこもりて、同行の人々にも物言うことの少なきは
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
また一市ひといち栄えるだろうと思われたが、そこはおたがいにまだ生面せいめんのことではあり、さすが話好きの関守氏も、これを機会に御輿みこしを上げて立帰ることになると、お雪ちゃんが
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ところで翌年の九月になって生面せいめんの人が尋ねて来て、彼の千匹猿の鍔を出すとともに、その鍔にからまる因縁話をして、名も告げずに帰って往った。高橋君はその因縁話を次の様に話した。
千匹猿の鍔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
其れでジユツプには改良の余地が一寸ちよつと見付からないが、盛装ロオヴの裾に幾段もひだを附けたり、又その裾にちがつた切目きれめを附けたりするので一生面せいめんを開くであらう。して白又は金茶が流行の色となるのであらう。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
相当入魂じゅっこんであるべきだが、実は土肥はその後の神尾をよく知らず、神尾もまたその後の土肥のことはあんまり知らずにいて、ここへ来たものだから、再会のようで、実は生面せいめんにひとしい。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
世の常ならば生面せいめんの客にさへまじはりを結びて、旅の憂さを慰めあふが航海のならひなるに、微恙びやうにことよせてへやうちにのみこもりて、同行の人々にも物言ふことの少きは、人知らぬ恨にかしらのみ悩ましたればなり。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)