現金げんきん)” の例文
店から現金げんきんで一萬兩も持出して、妾を二人もかこつて居りました。三右衞門が丈夫になつて、帳尻ちやうじりを見たら一たまりもありません。
外套ぐわいたう日蔭町物ひかげちやうもの茶羅紗ちやらしやかへしたやうな、おもいボテ/\したのを着て、現金げんきんでなくちやかんよとなどゝ絶叫ぜつけうするさまは、得易えやすからざる奇観きくわんであつたらうとおもはれる
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
我欲がよく目當めあてがあきらかにえねばわらひかけたくちもとまでむすんでせる現金げんきん樣子やうすまで、度〻たび/\經驗けいけん大方おほかた會得えとくのつきて、此家このやにあらんとにはかねづかひ奇麗きれいそんをかけず
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「エエ、よござんす」明智は子供の様に現金げんきんである。そんなことを恥しがったり、もじもじしたりしていない。妙子さんの頼みなら、いつでも帰りますと云わぬばかりだ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
義夫よしおさんは、現金げんきんね。ごようがすむとさっさとあるくんですもの。」
ある夜の姉と弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)
世間は隣人りんじんに対して現金げんきんである如く、英雄ヒーローに対しても現金である。だから、う云ふ偶像にも亦常に新陳代謝や生存競争が行はれてゐる。さう云ふ訳で、代助は英雄ヒーローなぞにかつがれたい了見は更にない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
左樣さやうならとてかしらさげげるに、あれいちやんの現金げんきんな、うおおくりはりませぬとかえ、そんならわたし京町きやうまち買物かいものしましよ、とちよこ/\ばしりに長屋ながや細道ほそみちむに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)