ぎつね)” の例文
君はさつきモロツコぎつねだとかつたねえ。どうしてどうしてちやんとわかるよ。それはほんとの毛ぢやないよ。ほんとの毛皮ぢやないんだよ
氷河鼠の毛皮 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
通るのは如何いかゞと存じ廻り道を致し候と申せども此儀甚だ不審ふしん千萬なり此萬澤村には昔より惡狐あくこありて是を萬澤ぎつねといふよしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「そのかたもね、おかくれになった殿とのさまぎつねみたように、いろいような青いようなみごとなしっぽが、九本あること?」
俗に、豆狸まめだぬきは竹の子の根にこもるの、くだぎつねは竹筒の中で持運ぶのと言うんですが、燈心で釣をするような、嘘ばっかり。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そしてまたわたしは、あの菜の花の咲きつづく和泉の國、信田しのだもりくずぎつねの傳説をおもひうかべないではゐない。
春宵戯語 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
こういってくずぎつねは一すんほうぐらいのきんはこと、水晶すいしょうのようなとおった白いたま保名やすなわたしました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
その中山から、少しはなれた山の中に、「ごんぎつね」という狐がいました。ごんは、一人ひとりぼっちの小狐で、しだの一ぱいしげった森の中に穴をほって住んでいました。
ごん狐 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「そんな噂もありますよ。町内の衆だつて、賀奈女の容貌と愛嬌と踊には感心し乍ら、腹の中ぢやぎつねだと思つてゐる。——死んだつて泣く者なんか一人もねえ、ザマア見やがれ」
おとらぎつねのはなしは、どなたもよくご存じでしょう。おとら狐にも、いろいろあったのでしょうか、私の知っているのは、「とっこべ、とら子」というのです。
とっこべとら子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
萬澤ぎつねと申居るが故殊によりて化される事も有なり其節途中に於て何ぞ怪敷あやしき事はなかりしやと尋ねらるゝを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おくさまぎつねは、じぶんのおへやへ行って、とじこもりました。おくさま狐のお女中じょちゅうのおじょうさん猫は、おへっついの上にすわって、ぐつぐつ、煮ものをしていました。
くずぎつねはいいました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ゆふべのその外套をほんとのモロツコぎつねだと云つた人は変な顔をしてしやちほこばつてゐました。
氷河鼠の毛皮 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
じじいぎつねは、窓からすてておしまいな。