牢獄ひとや)” の例文
牢獄ひとやのような大きな構造かまえの家がいかめしいへいを連ねて、どこの家でも広く取り囲んだ庭には欝蒼うっそうと茂った樹木の間に春は梅、桜、桃、すももが咲きそろって
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
繋留場には、種牛の外に、二頭の牡牛もつないであつて、丁度死刑を宣告された罪人が牢獄ひとやの内に押籠おしこめられたと同じやうに、一刻々々と近いて行く性命いのちの終を翹望まちのぞんで居た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「主人摂津守せっつのかみのおいいつけでござる。城内の牢獄ひとやまでご案内してまいる」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうして冷たい女主人の顔を見、友人の誇らしい浮薄な風采を見、牢獄ひとや同様に仕切られた狭い一室に、疲れはてた身体からだを休めた時、つくづく私は何だか都会の幻影に欺かれてゐたやうな気がした。
新橋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あなたのふしぎをもて牢獄ひとやの窓をあけてください
祈祷 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
牢獄ひとやまど俯居うつゐして
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
空はまろく海ははろけしここは妻よ牢獄ひとやならずとうち叫び寝し
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
くるしきこひの牢獄ひとやより
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
水あさぎ空ひろびろし吾が父よここは牢獄ひとやにあらざりにけり
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
くるしきこひの牢獄ひとやより
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
深みどり海はろばろし吾が母よここは牢獄ひとやにあらざりにけり
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あぢきなき牢獄ひとやのなかに
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
今さらに別れするより苦しくも牢獄ひとや二人ふたりひしまされり
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
れたるちひさき牢獄ひとや山葵色わさびいろくもりにうちなげく。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かなしきは人間のみち牢獄ひとやみち馬車のきしみてゆく礫道こいしみち
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
壁重き女囚ぢよしう牢獄ひとや
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
まどもなき牢獄ひとやの壁の
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
牢獄ひとやめく工場こうばの奥ゆ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)