無愛想ぶあいそ)” の例文
計らずも迷亭先生の接待掛りを命ぜられて無愛想ぶあいそな顔もしていられないから、ニャーニャーと愛嬌あいきょうを振りいてひざの上へあがって見た。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
愛子は無愛想ぶあいそなほど無表情に一言ひとことそう答えた。二人ふたりの間にはむずかしい沈黙が続いた。葉子はすわれとさえいってやらなかった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
が、彼はこの風流な若者が、彼の崇拝する素戔嗚の敵の一人だと云う事を承知していた。そこでいかにも無愛想ぶあいそ
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あれほど、伊那丸の首に、恩賞のぞみのままの沙汰さたをふれておきながら、この無愛想ぶあいそな口ぶりはどうだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さうぐにやなほらねえな」醫者いしや無愛想ぶあいそにいつた。百姓ひやくしやう依然いぜんとしてあをかほをしながら怪我人けがにん脊負しよつてかへつてつた。それから二三にん療治れうぢんで勘次かんじばんつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
或晩あるばん竜子は母と一緒に有楽座ゆうらくざ長唄ながうた研精会の演奏を聞きに行った時廊下の人込ひとごみの中で岸山先生を見掛けた。岸山先生は始めて診察に来た時の無愛想ぶあいそな態度とはちがって鄭寧ていねい挨拶あいさつをした。
寐顔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
赤シャツの行く所なら、野だは必ず行くにきまっているんだから、今さらおどろきもしないが、二人で行けば済むところを、なんで無愛想ぶあいそのおれへ口をけたんだろう。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そしてある日「お前の楽器は才で鳴るのだ。天才で鳴るのではない」と無愛想ぶあいそにいってのけた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
無愛想ぶあいそにつぶやいた。倉地はその言葉で始めて何かいったのをかすかに思い出したふうで
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
従って彼女の眼に見える健三は、何時も親しみがたい無愛想ぶあいそな変人に過ぎなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「それじゃ無愛想ぶあいそは自分より弱いものを、き使う鋭利なる武器だろう」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
無愛想ぶあいそさきを越してしまった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)