炬燵櫓こたつやぐら)” の例文
炬燵櫓こたつやぐらまたいだ同然、待て待て禁札を打って、先達が登山の印を残そうと存じましたで、携えました金剛を、一番突立つったてておこう了簡りょうけん
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
机竜之助は、また炬燵櫓こたつやぐらの中へ両の手を差込んで、首をグッタリと蒲団ふとんの上へ投げ出して、何事もなく転寝うたたねの形でありました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
見ると、この春、普請ふしんしたばかりの新座敷の天井へ向って、炬燵櫓こたつやぐらをかさねて踏み台にし、浮大尽は、筆を持って何か書きちらしているのだった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆき子は立つたなりそれを見降してゐたが、思ひついたやうに、蒲団から、炬燵櫓こたつやぐらを引つぱり出して、さつさと風を切るやうな音をたてて蒲団をたゝみ出した。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
信州にはじめて入ったM君は、炬燵櫓こたつやぐらの上に広盆しいて、焜炉こんろのせての鳥鍋をめずらしがっていた。
雪の武石峠 (新字新仮名) / 別所梅之助(著)
蒲團ふとんをすつぽり、炬燵櫓こたつやぐらあし爪尖つまさきつねつてて、庖丁はうちやうおときこえるとき徐々そろ/\またあたまし、ひと寢返ねがへつて腹這はらばひで
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
じっと、炬燵櫓こたつやぐらの上に身を押しつけたままで、動くことさえがおっくうのように見えました。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ですから、のちに、私がその「魔道伝書」のすき見をした時も炬燵櫓こたつやぐら……(下へ行火あんかを入れます)兼帯の机の上に、揚ものの竹の皮包みが転がっていました——
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこで、炬燵櫓こたつやぐらの上で、二人はお取膳とりぜんの形で、安倍川を食べにかかりました。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
がらくた壇上に張交はりまぜの二枚屏風にまいびょうぶ、ずんどのあかの花瓶に、からびたコスモスを投込んで、新式な家庭を見せると、隣の同じ道具屋の亭主は、炬燵櫓こたつやぐらに、ちょんと乗って、胡坐あぐらを小さく、風除かぜよけに
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みちもない、雲に似て踏みごたえがあって、雪に似てつめたからず、朧夜おぼろよかと思えば暗く、東雲しののめかと見れば陰々たる中に、煙草盆、枕、火鉢、炬燵櫓こたつやぐらの形など左右、二列ふたならびに、不揃ぶぞろいに、沢庵たくあんたるもあり
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)