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炎暑
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えんしよ
夫よりして友次郎
夫婦は
路次の
油斷なく少しも早く江戸に
到り
如何にもして身の
落付を定めんものと
炎暑の強きをも
厭はず夜を日に
繼で
行程に
早晩大井川を
盛なる
哉、
炎暑の
色。
蜘蛛の
圍の
幻は、
却て
鄙下る
蚊帳を
凌ぎ、
青簾の
裡なる
黒猫も、
兒女が
掌中のものならず、
髯に
蚊柱を
號令して、
夕立の
雲を
呼ばむとす。
與へ
干殺さんとこそ
巧みけれ
然ば
無慚なるかな藤五郎は其身
不行跡とは云ながら
僅か三
疊の
座敷牢に
押籠られ
炎暑の甚はだしきをも
凌ぎかね
些々たる
庇間の風を