漸々だん/\)” の例文
漸々だん/\大宮の宿しゅくを離れて、桶川おけがわを通り過ぎ、こうの手前の左は桑畠で、右手の方は杉山の林になって居ります処までまいりました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
自分は此等これら縁邊のものを代る/″\喰ひ𢌞つて、そして、高等小學から中學と、漸々だん/\文の林の奧へと進んだのであつた。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
それとはまた打つて變つた癇癪持の負嫌ひの意地惡な妹娘は今でさへ見てゐて心を寒うするやうな行爲を年齡としと共に漸々だん/\積み重ねて行きつつあるのである。
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
ミハイル、アウエリヤヌヰチはもとんでゐた大地主おほぢぬし騎兵隊きへいたいぞくしてゐたものしかるに漸々だん/\身代しんだいつてしまつて、貧乏びんばふし、老年らうねんつてから、つひ郵便局いうびんきよくはひつたので。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それでも漸々だん/\いきほひをくはへてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
が、漸々だん/\病勢が猖獗になるにれて、渠自身も餘り丈夫な體ではなし、流石に不安を感ぜぬ譯に行かなくなつた。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
もうおたねとまっては隠すことは出来ない。あれは内から膨れて漸々だん/\前の方へ糶出せりだして来るから仕様がない。何うも変だ、様子がおかしいと注意をいたして居ました。
大氣は澄んで、蒼い空を限つて立ち並んで居る峯々の頂上などまでどつしりと重みついて來たやうに見ゆる。漸々だん/\紅らみそめた木の實をあさるいろ/\の鳥の聲は一朝ごとに冴えまさつた。
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
按摩になってと思いまして入ったんでございますが、漸々だん/\銭が無くなっちまいましたから、江戸へ帰っても借金はあり、と云って故郷こきょうぼうがたく、何うかして帰りてえが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
借金もあるうちですから漸々だん/\行立ゆきたたなくなって、居候どころじゃアごぜえませんから、出てくれろと云われるのは道理もっともと思って出ましたが、ほかに親類身寄もありませんから
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
賭博いたずらばかり烈しく致して居りますが、あすが日、親父の腰へ縄でも附きますような事がありますと、私も見てはいられませんが、漸々だん/\借財が出来まして、うしても此の暮が行立ゆきたたず
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
奥様の御病気が漸々だん/\悪くなり、その上寒さになりましてからキヤ/\さしこみが起り、またお熊は、漸々お腹が大きくなって身体が思う様にきゝませんと云って、勝手に寝てばかり居るので
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)