浴衣地ゆかたぢ)” の例文
すると、あちらの壁が無惨にくり抜かれてあつて、あらざらしの浴衣地ゆかたぢをカーテンみたいにしたのが、汚く垂れさがつてゐ、隣家の二階と通じてゐるのが分つたのである。
釜ヶ崎 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
おつぎはもう十九のあきであつた。おつぎは浴衣地ゆかたぢておしなはかつたのである。かみひるうち近所きんじよ娘同士むすめどうし汗染あせじみた襦袢じゆばんひとつの姿すがたたがひうたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おつぎは浴衣地ゆかたぢあかおびめた。勘次かんじこん筒袖つゝそで單衣ひとへやけあしみじかすそからた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
冥途めいどからほとけ宿やどつたしるしだといつてかなら提灯ちやうちん墓地ぼちからけられるのである。おつぎは勘次かんじふところいくらかあたゝかにつたので、廉物やすものではあるが中形ちうがた浴衣地ゆかたぢこしらへてもらつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)