浮木ふぼく)” の例文
しかし、一族大勢がやってきて、だんだんに智深の説得を聞き、盲亀もうき浮木ふぼくで、ついに彼の策にすがった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たなからちる牡丹ぼたもちものよ、唐様からやうたくみなる三代目さんだいめよ、浮木ふぼくをさがす盲目めくらかめよ、人参にんじんんでくびく〻らんとする白痴たはけものよ、いわしあたま信心しん/″\するお怜悧りこうれんよ、くものぼるをねが蚯蚓み〻ずともがら
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
恰度ちょうどそのころ、彼には鳥渡ちょっと気懸きがかりな事件が生じた。それは家扶かふ孫火庭そんかていが、一週間ばかりというものは、行方不明になったことだった。彼に行かれては、漢青年は浮木ふぼくにひとしかった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
盲亀もうき浮木ふぼく優曇華うどんげの花、お蔭で目的を果したという鄭重なお礼状が来た。しかしそれから一月ばかりして、僕は或る朝役所で官報を開くと同時に吃驚びっくりした。野口君の休職辞令が出ていたのである。
首切り問答 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
春さればさくらさきけり花蔭はなかげよど浮木ふぼくこけも青めり
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
身は緑林りょくりんにおき、才は匹夫ひっぷ、押して申しかねますなれど、きょうの日は、てまえにとって、実に、千ざいの一ぐうといいましょうか、盲亀もうき浮木ふぼくというべきか、逸しがたい機会です。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それでは阿波あわ鳴門なるとうずに巻込まれて底へ底へと沈むようなもんで、頭の疲れや苦痛に堪え切れなくなったので、最後に盲亀もうき浮木ふぼくのように取捉とりつかまえたのが即ちヒューマニチーであった。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)