浮島うきしま)” の例文
諸君しよくんかずや、むかし彌次郎やじらう喜多八きたはちが、さもしいたびに、いまくひし蕎麥そば富士ふじほど山盛やまもりにすこしこゝろ浮島うきしまがはら。やまもりに大根だいこんおろし。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「されば、その君は、伊豆山から叔父の法師ほか十数名に守られて落ち行く途中、御運つたなく、駿河の浮島うきしまはらにて、幕府の武士にみなごろしにされたとかの噂にござりまする」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
阿波の高市たかまちに来た旅役者の嵐雛丸あらしひなまるも殺された。越後えちご縮売ちぢみうりの若い者も殺された。それからきょうの旅画師に小田原おだわらの渡り大工。浮島うきしま真菰大尽まこもだいじんの次男坊も引懸ったが、どれも三月とは持たなかった。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
常陸ひたちの国霞が浦の南に、浮島うきしまと云って、周囲めぐり三里の細長い島がある。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
浮島うきしまぎ離れても行く方やいづくとまりと知らずもあるかな
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
浮島うきしま11・6(夕)
夕刻ゆふこくは、六文錢ろくもんせんも、八門遁甲はちもんとんかふなんにもない。に、煙草盆たばこぼんひかへて、わたし一人ひとりなゝめ琵琶棚びはだな見込みこんで、ぽかんとひかへた。青疊あをだたみいたづらにひろくして、大卓だいたくは、浮島うきしまていである。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
神官達の案内で、頼朝よりとも狩倉かりくらのあとをただし、白糸の滝を見物し、また、しばし浮島うきしまはらに馬を立てて、うすずく夕富士にわかれを告げながら、やがて大宮の宿駅しゅくえきへさしてこの行軍はゆるやかに流れていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)