死様しにざま)” の例文
旧字:死樣
気の小さな浅之丞は、死様しにざまのむごたらしさをひどく気に病むでゐたが、そのあくる日から自分の腹のなかで猫の啼き声がすると言ひ出した。
「姉さんにあんなむごたらしい死様しにざまをさせたのも、要さんの職を取り上げたのも、みんな、天とう様のせいかねえ」
礫心中 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
その浅ましい死様しにざまさらされず、神隠しになっているがお慈悲じゃ、沼へ落ちたなら、死体がまったく底へ沈んでしまって浮き出さないように、岩にぶっ裂かれたんなら
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それはいお思附おもいつきである。この度の事については、命乞いのちごいの仲裁なら決して聴くまいと決心していたが、晴がましい死様しにざまをさせるには及ばぬというお考は道理至極である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
翌朝やつと明るくなる頃、襤褸ぼろを着た跣足はだしの老人が来て、フロルスに逢ひたいと云つた。主人の怪しい死様しにざまに就いて、何か分かるかと思つて、差配人が出て老人に逢つた。
物静かな死様しにざまだったけれど、それは、鷺太郎のたしかに二人連れであったという証言——、それに
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
これが静子の夫であり、碌々商会の重役である小山田六郎氏の、悲惨な死様しにざまであったのだ。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
可愛い児供こどもの生れた時、この児も或は年を老つてから悲惨みじめ死様しにざまをしないとも限らないから、いつそ今うスヤ/\と眠つてる間に殺した方がいいかも知れぬ、などと考へるのは
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
こんな死様しにざまをしなけりゃならねえ理由わけも——あったようにゃあ思われねえが——いやこうと言っちゃなんだが、例の、そら、奥州路の探しものにさっぱり当たりがつかねえので
道子は、さきに述べたように、無惨極まる死様しにざまをしていたのですが、傷は三ヶ所で左右の胸に各一ヶ所、それから右の頬に軽い切傷が一つありました。致命傷は左胸部の刺創でありました。
彼が殺したか (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
アララット山に神智広大能く未来を言いつる大仙ありと聞き、自ら訪れて「汝に希有けうの神智ありと聞くが、どんな死様しにざまで終るか話して見よ」と問うと、「われは汝に殺されるべし」と答えたので
甲「どうしてあの人はあんな死様しにざまをしただろうか」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
女優柳糸子が、不思議な死様しにざまをしたと知れたのは、その翌日の午後、夕刊の締切近い時刻でした。
踊る美人像 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
その二人のいずれもが、なんとも原因不明な死様しにざまをしてしまった。死んだとは思われない。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
祥雲氏とてももう助からないものと覚悟をした。同じ死ぬるのだつたら、せめて死様しにざまだけは立派にしたいものだと、起き上つて蒲団を四つに畳むだ。そしてその上にあがつて座禅を組むだ。
他部族の男の種を宿さぬよう麁末そまつな手術を仕損じてか、とにかくその頃の婦女にはかようの死様しにざまが実際あったので、現今見るべからざる奇事だから昔の記載は虚構だと断ずるの非なるは先に論じた。