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正太郎
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しようたらう
あれが頭の子でなくばと
鳶人足が女房の
蔭口に聞えぬ、心一ぱいに我がままを
徹して身に合はぬ
巾をも広げしが、
表町に田中屋の
正太郎とて歳は我れに三つ劣れど
破れかぶれに
暴れて
暴れて、
正太郎が
面に
疵一つ、
我れも
片眼片足なきものと
思へば
爲やすし、
加擔人は
車屋の
丑に
元結よりの
文、
手遊屋の
彌助などあらば
引けは
取るまじ
夫れはお
前が
嫌やだといふのも
知れてるけれども
何卒我れの
肩を
持つて、
横町組の
耻すゝぐのだから、ね、おい、
本家本元の
唱歌だなんて
威張りおる
正太郎を
取ちめて
呉れないか
秋雨しと/\
降るかと
思へばさつと
音して
運びくる
樣なる
淋しき
夜、
通りすがりの
客をば
待たぬ
店なれば、
筆やの
妻は
宵のほどより
表の
戸をたてゝ、
中に
集まりしは
例の
美登利に
正太郎