かん)” の例文
旧字:
いまかんを通じたばかりの女の首が、ドサリ、血を噴いて、畳を打った。播磨大掾はりまだいじょう水無みな井戸いどの一刀はもう腰へかえっている。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
こうなると、日ごろのゲジゲジも迂路鼠うろねずみ青草蛇あおだいしょうも、案外、天真爛漫らんまんなもので、飲む、踊る、唄うなど、百芸のかんを尽して飽くるを知らない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ですからその夜は文字通り一夕のかんを尽した後で、彼の屋敷を辞した時も、大川端おおかわばたの川風に俥上の微醺びくんを吹かせながら、やはり私は彼のために
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あたかも報復の念迸溢ほういつして一寸刻いっすんきざみにしなければあきたらないかのように、生の去ったのちの肉塊にさえ、その情欲のおもむくままにかんを尽してひそかに快をっているのだ。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
ジェミイは心がおどるようで、内にはいって行くと、妖精フェヤリーたちは声をあわせてかんげいした。
ジェミイの冐険 (新字新仮名) / 片山広子(著)
孔明はふと眉を曇らせたが、なお将士のかん興醒きょうざめさせまいと、何気ない態で杯をかさねていると、侍中の一士が
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、李逵りきに代って深くあやまり、たって芸人の男親ひとりを連れて帰った。それやこれやで、せっかくな琵琶亭のかんも、帰りは味気ない夜道になった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ともに死ぬ仲間であればこそ、同じ覚悟をすえている戦友であればこそ、和気あいあい、散りぎわの花のそよぐが如く、かんを尽しあっていたのであるが——咄嗟とっさ
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
軍旗祭の祝いに、秀吉もその日、わざわざ山崎へ来て、かんをともにした。旗幟や馬印を見て
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……では今夜は、かんを尽して、青面獣せいめんじゅう楊志ようしの前途を祝うとしよう。ただ、他日でもよい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その拳にも飽き、また馬鹿騒ぎのかんもつきると、やがて水亭の夜は、おひらきとなっていた。そして妓たちは、さらに楮幣のお祝儀はなを、それぞれ多分にもらって引き揚げて行った。
こうして、何番勝負かののち、酒餐しゅさんをたまい、伎女ぎじょ楽人がくじんの舞があって、一せいに、唱歌しおうて、秋ならば、菊、桔梗ききょうなどの一枝ひとえ一枝ひとえ家土産いえづとに、終日ひねもすかんをつくして終わるのであった。
「長夜のかんはまだ宵のうち、すこし外気に酔をさまして、また飲み直そう」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きょうの五月五日も、みな、生きの身のかんをつくして暮れ——ほどなく加茂の葉桜のうえに、夕月を見るころ、主上の鳳輦ほうれんも、上皇の御車も、れきろくと、群臣の車馬をしたがえて、還御となった。
あすは都へ還るという前夜、曹操は諸大将と一せきかんを共にした。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
末席は末席で、それぞれかんいていた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)