横眼よこめ)” の例文
ふと視線が合うと、蝶子は耳の附根つけねまで真赧まっかになったが、柳吉は素知らぬ顔で、ちょいちょい横眼よこめを使うだけであった。それが律儀者りちぎものめいた。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
居ないのでないもうこっちが三年生なのだが、あの挨拶あいさつってそっと横眼よこめ威張いばっている卑怯ひきょう上級生じょうきゅうせいが居ないのだ。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
チチコフが横眼よこめでチラと眺めると、今度はソバケーヴィッチの恰好が中ぐらいの熊そっくりに見えた。
顔の色を林間の紅葉もみじに争いて酒に暖めらるゝ風流の仲間にもらず、硝子ガラス越しの雪見に昆布こんぶ蒲団ふとんにしての湯豆腐をすいがる徒党にも加わらねば、まして島原しまばら祇園ぎおん艶色えんしょくには横眼よこめつかトつせず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
おはもじながらここもとは、そもじおもうてくびッたけ、からすかぬはあれど、そもじつかれぬ。雪駄せったちゃらちゃら横眼よこめれば、いたさくら芙蓉ふようはなか、さても見事みごと富士ふじびたえ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
童子は母馬の茶いろなひとみを、ちらっと横眼よこめで見られましたが、にわかに須利耶さまにすがりついて泣き出されました。けれども須利耶さまはおしかりなさいませんでした。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)