智慧者ちえしゃ)” の例文
「お前さんは実に偉い。智慧者ちえしゃだねえ。そうすればお玉さんは松五郎の子で無いのだから、かたき同士の悪縁という方は消えて了うね」
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「困りますね。ポローニヤスも、おとしをとられたようですね。往年の智慧者ちえしゃも、僕の乱心などを信じるようじゃ、おしまいだ。」
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
畸形児なんてものは、多くは白痴か低能児だが、あいつに限って、低能児どころか、実に恐しい智慧者ちえしゃなんだ。希代きだいの悪党なんだ。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この若者わかものは、なかなかの智慧者ちえしゃでありましたから、このかぎが、どんなかねつくられていたかということを、すぐに見分みわけることができたのです。
三つのかぎ (新字新仮名) / 小川未明(著)
有「去年の九月屋敷を出てしまい、それっきり帰らない此の有助が戸を叩いたばかりで、有助とは実に旦那は智慧者ちえしゃだなア…これだから悪い事も善い事も出来るんだ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ロミオ さア、くわいかうとはわるい意味いみでもなからう、が、くのは智慧者ちえしゃ所爲しょゐではない。
貴下あなたはほんとに智慧者ちえしゃでいらっしゃるよ。百人足らずの人足を、無銭ただつかってさ。」
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時々は甘えて煙草をくれと云う。此家うちではまぬと云っても、忘れてはまた煙草をくれと云う。正直の仙さんは一剋いっこくで向張りが強く、智慧者ちえしゃの安さんは狡獪ずるくてやわらかな皮をかぶって居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
鈴弁とは比較にならぬ智慧者ちえしゃとして、犯罪と差引き勘定をすることで、半面詐欺にかかったものの迂濶うかつさに対する皮肉の意味も含まれており、勝利者と敗北者への微妙な人間の心理作用でもあった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
なれども武田重二郎は智慧者ちえしゃでございますから、わしを嫌うなと思いながらも舅姑しゅうとの前があるから、照や/\と誠に夫婦中の宜い様にして見せますから、両親は安心致して居りますうち
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おおかた智慧者ちえしゃの板倉殿も、このたびの不思議な盗難には手の下し様が無く、やけっぱちで前代未聞みもんの太鼓のお仕置きなど案出して、いい加減にお茶を濁そうという所存に違いない
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
おじいさんは、自分じぶん智慧者ちえしゃだろうと、いえかえってから威張いばっていました。
源次郎は早くもすいし、アヽヽこりア流石さすが飯島は智慧者ちえしゃだけある、己と妾のお國と不義している事をさとられたか、さなくば例の悪計を孝助が告げ口したに相違なし、何しろ余程の腹立はらだち