はや)” の例文
灯火ともしびの光きら/\として室の内明るく、父上も弟もはや衣をあらためて携ふべきものなど取揃へ、直にも立出でんありさまなり。
鼠頭魚釣り (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ひと無茶苦茶に後世を呼ぶは、なほ救け舟を呼ぶが如し。身のなかばはや葬られんとするに当りて、せつぱつまりて出づる声なり。
青眼白頭 (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
英語でホールンド・ホールス(角馬)と呼ぶは、またニュウともいい、羚羊の一属で二種あり、南阿と東阿に産したが、一種は多分はや絶えたであろう。
バルタ いや、ぼくきませぬ。主人しゅじんわたくしをばはやんだとのみおもうてをられます。しも此處こゝとゞまって樣子やうすなどうかゞはうならば、斬殺きりころしてのけうと、おそろしい見脈けんみゃくおどされました。
大方今ははや四時近いのであらうか。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
何所いづくより何の用事で見えられた、と衣服みなりの粗末なるにはや侮り軽しめた言葉遣ひ、十兵衞さらに気にもとめず、野生わたくしは大工の十兵衞と申すもの
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
はやく論じた通り、上古の野椎ミツチなど、蛇の尊称らしきより推せば、足名椎手名椎は蛇の手足なきをとしたので、この蛇神夫妻の女を悪蛇が奪いに来た。
大方今ははや四時近いのであらうか。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
然も設計予算つもりがきまではやし出して我眼に入れしも四五日前なり、手腕うでは彼とて鈍きにあらず、人の信用うけは遥に十兵衞に超たり。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
リッチー博士より前にクヴィエーがはやそのゴカイ類たる由を述べ居る、もっとも、博士とは別な点から起論されたが帰する所は一で、ここに引いても動物専門の人でなくては解らぬ
こたびは我これに跨がり、急ぎて鉤に餌を施し、先づこれを下して後はじめて四方あたりを見るに、舟子ははや舟を数十間の外に遠ざけて、こなたのさまを伺ひ居れり。
鼠頭魚釣り (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
かうべを回らせば徃時をかしや、世の春秋に交はりて花には喜び月には悲み、由無き七情の徃来に泣きみ笑ひみ過ごしゝが、思ひたちぬる墨染の衣を纏ひしより今ははや
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
十兵衞も分らぬことに思へどもいなみもならねば、はや感応寺の門くゞるさへ無益むやくしくは考へつゝも、何御用ぞと行つて問へば、天地顛倒こりやどうぢや、夢か現か真実か
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
悦びて笭箵の中にこれを放ち入れつ、父上は弟はと見めぐらすに、父上の手にも弟の手にもはや幾尾か釣れたりとおぼしく、網笭箵はいと長く垂れて其底水に浸り居れり。
鼠頭魚釣り (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
雲霧自然おのづと消え行けば、岩角の苔、樹の姿、ありしに変らでまなこに遮るものもなく、たゞ冬の日の暮れやすく彼方の峯にはやりて、梟の羽翥はばたきし初め、空やゝ暗くなりしばかりなり。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)