旅人りょじん)” の例文
其の芋茎ずいきへ火縄を巻き付けて、それを持って追剥おいはぎがよく旅人りょじんおどして金を取るという事を、かねて龜藏が聞いて知ってるから、そいつを持って孝助を威かした。
その頃、ここらの地方は大饑饉ききんで、往来の旅人りょじんもなく、宿をるような家もありませんでした。
旅人りょじんにだまされて林の中にり込まれて強姦ごうかんされた村の子守りの話、三人組の強盗が抜刀ばっとう上村かみむらの豪農の家にはいって、主人と細君とをしばり上げて金を奪って行った話
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
上山を発してからは人烟じんえんまれなる山谷さんこくの間を過ぎた。縄梯子なわばしごすがって断崖だんがい上下しょうかしたこともある。よるの宿は旅人りょじんもちを売って茶を供する休息所のたぐいが多かった。宿で物を盗まれることも数度に及んだ。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
全く想像のほかと言わなければならないが——この旅人りょじんには相当のあたりがついていると見えて、さのみ臆する模様もなく、道に迷うている者の姿とも見えず、ほぼ白骨温泉場の道をたどりたどって
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
雲から吐出されたもののように、坂に突伏つっぷした旅人りょじんが一人。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
てまえなぞを剥いでも仕様がないが、汝は馬を引いてるんだから、たまには随分多分の金を持ってるよい旅人りょじんが、佐原さはら潮来いたこあたりから出て来るから、汝其の金のありそうな客を見たら
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
竜之助は、またも旅人りょじんの心になりました。
口元の締ったい男で、其の側に居るのは女房と見え、二十七八の女で、頭髪あたまは達磨返しに結び、鳴海なるみ単衣ひとえに黒繻子の帯をひっかけに締め、一杯飲んで居る夫婦づれ旅人りょじん
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
猫のひたえのようなうちだが売って、其の金子を路用として日光辺の知己しるべを頼ってく途中、幸手の宿屋で相宿あいやど旅人りょじんが熱病で悩むとて療治を頼まれ、其の脉を取れば運よく全快したが
私も種々いろ/\悪い事をした揚句、一度出家はしたが路銀に困っている処へ通り合せた親子連の旅人りょじん小金原の観音堂で病に苦しんで居る様子だから、此の宗觀さんをだまして薬を買いに遣った跡で
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
年は二十七位だが、うしても廿三四位としか見えないというすこぶ代物しろものを見るよりも、伴藏は心を動かし、二階を下りて此のの亭主に其の女の身上みのうえを聞けば、さる頃夫婦の旅人りょじんが此の家へ泊りしが