文覚もんがく)” の例文
旧字:文覺
文覚もんがくとかいって、去年こぞの秋、熊野権現に、百日荒行あらぎょうの誓願を立てて、毎日、那智なちの滝つぼで、滝に打たれていたとか、申すことですが
荒法師の文覚もんがくが、西行を、きざな奴だ、こんどったら殴ってやろうと常日頃から言っていた癖に、いざ逢ったら、どうしても自分より強そうなので
花吹雪 (新字新仮名) / 太宰治(著)
後の高尾の文覚もんがくだの、黄蘗おうばく鉄眼てつげんだのは、仕事師であるが、寂心は寂心であった。これでも別に悪いことは無い。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
謀叛僧文覚もんがく荒行あらぎょうをやった那智なち大瀑おおだき永久えいきゅうみなぎり落つ処、雄才ゆうさい覇気はきまかり違えば宗家そうかの天下をひともぎにしかねまじい南竜公なんりゅうこう紀州きしゅう頼宣よりのぶが虫を抑えて居た処
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その一人は佐藤義清のりきよ、もう一人は遠藤盛遠もりとおである。義清は二十三歳、盛遠は十八歳で剃髪した。前者は一所不住の歌人西行さいぎょう、後者は高雄神護寺の荒行者文覚もんがくである。
西行の眼 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
文覚もんがくさへ恐れさせた西行さいぎやうほどの肉体的エネルギイのなかつたことは確かであり、やはりわが子を縁から蹴落した西行ほどの神経的エネルギイもなかつたことは確かであらう。
続芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
文覚もんがく上人が、頼朝に源家再興の旗印を上げさせるきっかけをつくったという、例の義朝の髑髏しゃりこうべは、実は偽物であった。唯、頼朝に謀叛心を起させようという、上人の計略であったのだ。
むかし文覚もんがくと称する一傲客、しばしが程この俗界を騒がせたり。
心機妙変を論ず (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
佐殿すけどの文覚もんがくふぐをすゝめけり
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
奈古谷寺なごやじの配所にいた僧の文覚もんがくである。その前後について来る武士は、目代の役人らしく、何か、馬上へ話しかけたりしている。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文覚もんがくの荒行
この金的は、よもはずれてはいまい——というように、自信をもったひとみで、文覚もんがくは、じいっと、相手の顔いろを見る。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
れいを、ふところに入れて、その懐中ふところから、文覚もんがくは、何やら、紙屋紙かみやがみに書いた一連の反故ほごを取り出した。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文覚もんがく文覚」追っても、叱っても、群衆はついてゆくのである。そのほこりと、うしおに巻きこまれて、範綱、宗業のふたりも、いつか、檻車のまぢかに押されて、共にあるいている。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう文覚もんがく(もと院の武者所むしゃどころの出身)若年、人妻に恋し、あやまって恋人の袈裟けさを斬り、青年期の関門につまずいたが、沙門しゃもんに入って、那智の滝でいくたびとなく自虐的な修業をとげ
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もしやご僧は、文覚もんがく殿ではありませんか」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)