敷波しきなみ)” の例文
はやくも大船のどうでは、むしろを清めて、尊氏が座をただして御使を待ち、直義とほかの諸将もともへかけて身を一様な敷波しきなみにして平伏していた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まゆしろ船頭せんどうぐにまかせ、蒔繪まきゑ調度てうどに、待乳山まつちやまかげめて、三日月みかづきせたる風情ふぜい敷波しきなみはないろたつみやこごとし。ひとさけくるへるをりから、ふとちすましたるつゞみゆる。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はじめは、数名の嗚咽おえつだったが、しだいに、廊の左右からきざはしの下にまで、敷波しきなみにヒレ伏していた公卿や舎人とねりにいたるまでの、すべての人影のむせごえになっていた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御車寄の階下には、その足利家のこう師直もろなお、また、近衛このえの武将新田義貞、名和長年など、天皇のお目からみると、どれもぎょにくい面だましいが、敷波しきなみに充満していた。
将士二千、見わたす限りの地に、あぐらして、敷波しきなみに坐っていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)