しばしば)” の例文
旧字:
最もしばしば往ったのはほど近い藤堂家である。この邸では家族の人々の誕生日、その外種々の祝日いわいびに、必ず勝久を呼ぶことになっている。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
黎元れいぐわん撫育むいくすることやや年歳としを経たり。風化ふうくわなほようして、囹圄れいごいまむなしからず。通旦よもすがらしんを忘れて憂労いうらうここり。頃者このごろてんしきりあらはし、地しばしば震動す。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
雨中は靴の上に更に大きなる木製の底つけたる長靴をはきて出勤せられたり。予をさな心に父上は不思議なる物あまた所持せらるる事よと思ひしこともしばしばなりき。
洋服論 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
成善しげよしが海保の塾にった後には、海保竹逕ちくけいしばしば渋江氏に警告して、「大分蔵書印のある本が市中に見えるようでございますから、御注意なさいまし」
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
然レドモ学業イマダ成ラズシテしばしば省スルハコレ二親ノ喜バザル所、僕モマタコレヲヅ。明朝直ニ西センのみト。余コノ言ヲ聞キテ甚コレニ感ズ。時ニ亥之吉年十六。他日ノ成業ここニオイテカ見ルベシ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
允成は表向おもてむき侍医たり教官たるのみであったが、寧親の信任をこうむることが厚かったので、人のあえて言わざる事をも言うようになっていて、しばしばいさめてしばしばかれた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)