攪乱こうらん)” の例文
旧字:攪亂
内より門を開いて迎え、同時に城中を攪乱こうらんして、騒擾そうじょうのうちに駙馬をうかがわば、手捕りになること物をつかむ如しとすすめるのです。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あえてこのさびのついた庭の面を荒すというようなことはありませんでしたが、不意に、二つの珍客が舞い込んで攪乱こうらんしました。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そりゃ不純なものもまじっていましたろう。しかし、ただ地方を攪乱こうらんするために、乱暴狼藉ろうぜきを働いたと見られては、あの仲間も浮かばれますまい。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼は、外人たちの経済力の源泉となりつつある支那の土貨に対して、彼らの向ける鋭い垂直トラスト尖鋒を、あくまで攪乱こうらんしなければやまぬと考えた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
ガラッ八は息せき切りながら、かれた人のように言い続けます。抜群な美しさに恵まれた娘の死顔に、さすが事になれた八五郎も攪乱こうらんさせられたのです。
銭形平次捕物控:050 碁敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
この前後は土着開発に急なる平和時代で、その結果は山と平地との間に、人知らぬ攪乱こうらんがあったかと思われ、山人出現の事例がたくさんに報ぜられている。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
多少先方の心田に不満の種をいて帰るか、然らずんば先方に機先を制せられて、人間離れのした声でかみは天堂しもは地獄まで引きずりまわされて、散々に神経系統を攪乱こうらんされて
謡曲黒白談 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
同時に愚息右近は、清洲の城内にあって、内部から攪乱こうらんし、火の手をあげて、寄手に便宜を与えることに相成っておりますれば——
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
江戸方面には薩摩方さつまがたに呼応する相良惣三さがらそうぞう一派の浪士隊が入り込んで、放火に、掠奪りゃくだつに、あらゆる手段を用いて市街の攪乱こうらんを企てたとのうわさも伝わり
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その証拠には、現に、奥の一間の平和の空気が、少しも攪乱こうらんされている模様のないことでわかります。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
なおかつヨーロッパの天地を攪乱こうらんさせているナポレオンの姿を見ていると、それは丁度、彼の腹の上の奇怪な田虫が、黙々としてヨーロッパの天地を攪乱しているかのようであった。
ナポレオンと田虫 (新字新仮名) / 横光利一(著)
外から攪乱こうらんする力の加わらぬ場合には、多数が一度に同じ感動を受けたとしても少しもさしつかえはないのでありますが、問題はただその幻覚の種類、これを実験し始めた時と場処
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
……この男が、遠浦帰帆えんぽきはんなど持って、持ち負けせぬかな? などというお言葉は、そろそろ乱波らっぱを放って、敵国を攪乱こうらんしにかかっているものです。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは昼のうちから自分たちの視覚を攪乱こうらんしていた大鷲が——この牢の暗い中に、ただ一羽、空で見たところよりも、こうして捕われているところを見ると、五倍も十倍も大きく
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
進んで挑戦的ちょうせんてきの態度に出、あらゆる手段を用いて江戸市街の攪乱こうらんを試み、当時江戸警衛の任にあった庄内藩しょうないはんとの衝突となったのも、三田みたにある薩摩屋敷の焼き打ちとなったのも皆その結果であって
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いま甲軍の疾風のごとく、三河に出て、作手つくであたりまで攻めて来るなら、大賀は岡崎にあって、内部を攪乱こうらんし、城門をひらいて甲州勢を迎え入れよう。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いもの奴め、つるを延ばしたものだ、もとこの屋敷のこっち側は土佐の屋敷だったんだが、それを薩摩が併合しちまやがった、そうして、今やこの邸が江戸攪乱こうらんの策源地となっている
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
気が小さいのか、兇悪な乱波らっぱとなって民衆を惑わし、城下を攪乱こうらんし、火の海を魔みたいになって活躍することなど——どうも出来そうもない気がする。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せっかくの静かな室内と新しい調度を思うままに攪乱こうらんせしめた日には、せっかくの新婚当夜のような新しい気分が台無しになるのです——そこは米友が心得たもので、いざ沸騰と見ると
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
勿論、京都在住の信長の部将は、見あたり次第に、落首の札などは取り捨てているが、彼らのねばりづよい攪乱こうらん戦術には、相当、手をやいているのである。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先手を打たれた死神の奴が狼狽して、お前にはとりつけないから、おれの手を借りて、お前の勝利を攪乱こうらんしようと企てたのだろう、もう、わかったよ、死ぬよ、お前と一緒に、おれもこの峠の上で
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
むしろ反織田の気勢をたかめ、近年では犬山城の下野守信清しもつけのかみのぶきよと通じて、暗に信長への離反を扶け、織田領内の攪乱こうらんを企てたりしている闇の謀将でもあった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このうえは、呉へ味方すると称して呉の内部から攪乱こうらんし、一面、蜀を伐つ計を急速おめぐらし遊ばしますように
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三平の所属は、武田家の乱波組らっぱぐみ(隠密)であった。敵国攪乱こうらん、諜報、聯絡、流言浮説の撒布さんぷなど、あらゆる実戦以外の戦闘に跳躍しているひとりであった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呂蒙はその前に、莫大な恩賞を賭けて、降人の一群を城下へまぎれ込ませ、流言を放って敵を攪乱こうらんしに出た。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、吉川元春の兵は、遠く、背後の平地から飾磨しかまあたりまで行動し出し、織田軍の輜重しちょう部隊を奇襲したり、兵船を焼いたり、流言を放ったり、攪乱こうらんに努め出した。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おそらく、一両人の者が城中を攪乱こうらんするためにやった仕事だろう。それに乗せられて混乱する味方自身のほうがはるかに危険だ。——足下はすぐ城兵を取鎮めに行け。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
作戦、目標、すべて岡崎の内部から、攪乱こうらんと呼応のあることを、かたく期して来たのである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、魏の陣中からあがった火の手は、裏切りがあってのことではなく、蜀の馬超が、斜谷のけんをよじ登って、ふいに搦手からめてから関内へ攻めこみ、後方攪乱こうらんの策に出た結果だった。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを司馬懿に密告してきたのは、金城の太守申儀しんぎの一家臣だった。孟達は、金城と上庸じょうようの両太守に、すでに秘事をうちあけて、洛陽攪乱こうらんの計をそろそろ画策し始めていたのであった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
火の手のさかんなるを見たら、同時に敵営へ迫って、側面から彼の陣地を攪乱こうらんせよ
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「つまり、乱波らっぱですね。人心を攪乱こうらんし、その機に乗じて、事をはかる——」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)