-
トップ
>
-
描
>
-
かき
後になぞと
言はヾ
其うちに
僕は
負けて、
小刀を
取られるから
嫌、どうぞ
是非今直に
描て
呉れよ、
紙や
筆は
姉樣のを
借りて
來べし、と
箒木を
捨てヽ
欠け
出すに、
先づお
待なされと
遽たヾしく
止め
詠め居たりしが
遙向に山一ツ見えけるにぞ吉兵衞は
水差に向ひ
彼高き山は
何國の山なりや
畫に
描し駿河の
富士山に
能も似たりと問ふ
水差答へて
那山こそ名高き四國の
新富士なりと答ふる
折から
此は
抑何に此山の
絶頂より
刷毛にて引し如き
黒雲の出しに水差は
仰天しすはや程なく
雨下しの來るぞや早く
用心して帆を