掻立かきた)” の例文
長い間窓に腰をかけていたので湯冷ゆざめもする、火鉢の火を掻立かきたてて裏の物干へ炭団たどんを取りに行くとプンプン鳥鍋とりなべにおいがしている。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「いや、お前様まんさま手近てちかぢや、あかり掻立かきたつてもらひたい、くらいとしからぬはなしぢや、此処等ここらから一ばん野面のづらやツつけやう。」
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「そう申せばあの教を説いて歩きます沙門には、いろいろ怪しい評判があるようでございませんか。」と、さも気味悪そうに申しながら、大殿油おおとのあぶらの燈心をわざとらしく掻立かきたてました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「あかりが暗い、掻立かきたてるが可い。お前がひどせッこけて、そうしょんぼりとしてる処は、どう見ても幽霊のようじゃ、行燈が暗いせいだろう。な。」
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それさへこけうもれたのを、燈心とうしん掻立かきたてる意氣組いきぐみで、引毮ひきむしるやうに拂落はらひおとして、みなみきた方角はうがくむつもりが、ぶる/\と十本じつぽんゆびふるはして、おどかしけるやうな
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)