投落なげおと)” の例文
こはき物を見付けつと、なほ隠れて車をり過し、ひらりとその上に飛び乗りて、積みたるさかなをば音せぬやうに、少しづつ路上みちのべ投落なげおとすを、牛飼は少しも心付かず。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
桂木は投落なげおとされて横になつたが、死をきわめて起返おきかえるより先に、これを見たか婦人の念力、そでおり目の正しきまで、下着は起きて、何となく、我を見詰みつむる風情ふぜいである。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
迂濶うかつに叫ぶと、その声を便宜しるべ何処どこからか岩石を投落なげおとされる危険をおそれたからである。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
曾てイスラエルの王アハブが隣の民の葡萄園を貪り、こうイゼベル夫の為にはかつて其民を殺して葡萄園を奪ひ、其むくいとしてイゼベルは後王宮の窓より投落なげおとされ、犬其肉をくらひしと伝へらるゝ所。
座頭ざとうむくと起直おきなほつて、はらて、道端みちばたにあつて往来わうらいさまたげなりと、二三十にんばかりにてもうごかしがたき大石だいせきかどをかけ、えいやつといふて引起ひきおこし、よりたかくさしげ、谷底たにそこ投落なげおとす。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)