トップ
>
手焙
>
てあぶ
ふりがな文庫
“
手焙
(
てあぶ
)” の例文
主人八郎兵衛と番頭、度を失って挨拶も忘れたものか、
蒼褪
(
あおざ
)
めた顔色も
空虚
(
うつろ
)
に端近の
唐金
(
から
)
の
手焙
(
てあぶ
)
りを心もち押し出したばかり——。
釘抜藤吉捕物覚書:09 怨霊首人形
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
丸行燈
(
まるあんどん
)
が一つ、赤あかと炭火のおこっている
手焙
(
てあぶ
)
りが二つ、さくらの脇に
燗鍋
(
かんなべ
)
をのせた火鉢があり、それには
燗徳利
(
かんどくり
)
が二本はいっていた。
醜聞
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私は悄然としながら、案内せられるままにそちらに通ると、
座蒲団
(
ざぶとん
)
を持って来てすすめたり、
手焙
(
てあぶ
)
りに火を取り分けて出したりしながら
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
陶器の
手焙
(
てあぶ
)
りのことを、古い人は“びん
懸
(
か
)
け”とよんだり、ただ“夜学”といったりした。夜学の友は、これにまさる物はない。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その当時、大江戸に、粋で鳴った鶯春亭の、奥まった離れには、もう、
主人
(
あるじ
)
役の長崎屋、古代杉の
手焙
(
てあぶ
)
りを控えて坐っている。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
▼ もっと見る
行燈
(
あんどん
)
のすすけた灯が暗い部屋ににじみ出ていた。とこの間を背にして、座蒲団が置かれ、胴丸の
手焙
(
てあぶ
)
りにいけた炭火がいやに赤々と見えた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
しずくの垂れる傘を
小女
(
こおんな
)
の一人にわたすと、大きな体を田代のそばに割込ませ、すぐに小倉は
手焙
(
てあぶ
)
りのかげに置かれたしながきを手もとに引寄せた。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
玄関の横の八畳には通りにむかって窓があった。ここの畳へ座る人種は我々と違っていた。特別の机が配置してあって、
手焙
(
てあぶ
)
りが冬は
各自
(
めいめい
)
についている。
旧聞日本橋:04 源泉小学校
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
中に挟んだ
手焙
(
てあぶ
)
りが一つ、横から照す絹行灯に、知らない者には、わけある仲とも見えたでしょう。
礫心中
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
胡座
(
あぐら
)
をかいた股の間へ
手焙
(
てあぶ
)
りを
擁
(
かゝ
)
へ込んで、それでも足らずにぢり/\と
蹂
(
にじ
)
り出しながら
我等の一団と彼
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
浅草から帰ったのが七時半ごろ、貸家も何もみつからなかったが朝の
憂鬱
(
ゆううつ
)
をさばさばと払いおとした気持ちであった。私は年寄りの部屋で
手焙
(
てあぶ
)
りに火をおこして文字焼きの用意をした。
貸家探し
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
たんば老人はそう思ったが、けぶりにもみせず、半インチほどになったタバコのすい殻を、キセルの火皿に詰め、それを
手焙
(
てあぶ
)
りの火ですいつけた。
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そんなことを思う傍らで、まだ
移転
(
ひっこし
)
の日のつづきを思い出しているのだった。翌日に着いた泡鳴の荷物は、荷車に二台の書籍と、あとは
夜着
(
よぎ
)
と、鉄の
手焙
(
てあぶ
)
りだけだった。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
甲斐は頷いて、机の上から書いたものを取りあげ、行燈の火を移して、巧みに紙を動かしながら、
手焙
(
てあぶ
)
りの上で燃したうえ、それを灰の中へ、きれいにまぜてしまった。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
正三郎と十太夫がいったときには、まだ時刻が早いのでひっそりしていた。大きな
手焙
(
てあぶ
)
り二つに、炭火をいっぱい盛って、障子はあけ放しのまま、雪を眺めながら飲みだした。
饒舌りすぎる
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そこは四帖半の小部屋で、行燈が明るく、
手焙
(
てあぶ
)
りの側に
中年増
(
ちゅうどしま
)
の女が一人坐ってい、千之助を見るとうしろへさがって手を突いた。千之助はあがって、刀を右に置きながら坐った。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
焙
漢検1級
部首:⽕
12画
“手”で始まる語句
手
手拭
手前
手巾
手繰
手許
手向
手綱
手際
手燭