悪口あくこう)” の例文
旧字:惡口
わたくしはあまりのもどかしさに、よくないこととりながらもツイ神様かみさまってかかり、さんざん悪口あくこういたことがございました。
彼女は最初僕の言葉を悪魔の呪詛のろいだと怖がった。けれど間も無く其奴を喜ぶようになった。一体人間というものは他人ひと悪口あくこうを好むものだ。
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「どんなに悪口あくこうかれようと、一向腹は立ちません。こちらは堪忍の四五字を心得てゐますからな。」
「何となれば彼は終始一貫、芥川竜之介あくたがはりゆうのすけの小説が出ると、勇ましい悪口あくこうを云ひ続けた。……」
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
間抜に背のたかい大人のやうな面をしてゐる団子屋の頓馬とんまが、かしらもあるものか尻尾しつぽだ尻尾だ、豚の尻尾だなんて悪口あくこうを言つたとさ、己らあその時千束様せんぞくさまへねり込んでゐたもんだから
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
人物評論でいかなる好人物でもちょっとくさした句があると、彼はすぐに圏点けんてんをつける。人の悪口あくこうを書くのがいいと思っているので、そういう句があると「翻天妙手ほんてんみょうしゅ、衆と同じからず」
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
真面目しんめんもくならざる宗教家しふけうかとは、直接ちよくせつ間接かんせつ外国ぐわいこく伝道でんだう会社ぐわいしや補助ほじよあづかり居りながら外国ぐわいこく宣教師せんけうし悪口あくこう批難ひなんするものなり、社界しやかい先導者せんだうしやを以て自らにんじ居りながら社界しやかい引摺ひきづられつゝ行くものなり
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
陰で同役が万年平番士まんねんひらばんしの玄蕃殿と悪口あくこうをたたいた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
だってお嬢さん、こんな言葉は、人間が少しく昂奮すると、普通云う平凡な悪口あくこうですよ。特に殺伐な西班牙ではね……ですから私も唯何気なく、常識でそう申したばかりです。
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかも彼は生きたか死んだか、いまだ行方ゆくへが判然しない。中には彼の悪口あくこうが、余りに人を傷けた為め暗殺されたのだと云ふものもある。(四)彼の著書には十二巻の全集がある。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「いや、信じなさらない、その証拠にはいつもマリヤ様の悪口あくこうを言うてゐなさる。」
作家 そんな物をせるのは愚ぢやありませんか? 読者に気の毒なのは勿論もちろんですが、雑誌の為にも損になるでせう。羊頭やうとうかかげて狗肉くにくを売るとでも、悪口あくこうを云はれて御覧なさい。
売文問答 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それに鉄也という人間が、社交上手で愛嬌があり、聡明でもあり義侠的でもあり、要するに立派な紳士だったので、尊敬こそすれ悪口あくこうなどは、誰もが云わなかったということです。
「八たび産褥さんじよくで生命懸けの目に逢つた女は、ちつとやそつとの悪口あくこうは利きませんよ。」
痩せてゐるだけに女将の脂ぎつた顔を見ると、つい胸が悪くなつて、悪口あくこうの二つ三つを投付けた。すると女将はいきなり大きな掌面てのひらでもつて収税吏のよこぱらを押へてぐつと締めつけた。
画かきはこんな悪口あくこうを聞いても、案外平気だつた。