あたり)” の例文
旧字:
内々その予言者だとかいうことを御存じなり、外にあたりはつかず、旁々かたがたそれでは、と早速じじいをお頼み遊ばすことになりました。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たしかに江戸の水を使っているとの目安以外、富五郎の所在はそれこそ天狗の巣のように皆目かいもくあたりが立たなかった。
余輩よはい常に思うに、今の諸華族が様々の仕組をもうけて様々のことに財を費し、様々のうれいうれえて様々の奇策きさく妙計みょうけいめぐらさんよりも、むしろその財のいまむなしく消散しょうさんせざるにあたり
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
公費患者は一ヶ月の食料が一人あたり三円というので、ほとんど残飯だけを食わされていたらしい。
(新字新仮名) / 坂口安吾(著)
故に一篇の詩に対する解釈は人各或は見を異にすべく、要は只類似の心状を喚起するに在りとす。例へば本書一〇二頁「さぎの歌」を誦するにあたりて読者は種々の解釈を試むべき自由を有す。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
くじにおあたりなさるわ。物欲しげに
要こそあれ滅多あたりこぶしを廻して、砂煙のうずまくばかり、くるくる舞して働きながら、背後うしろから割って出て、柳屋の店頭みせさき突立つったった、蚰蜒眉げじげじまゆの、猿眼さるまなこの、ひょうの額の、熟柿じゅくし呼吸いきの、蛇の舌の
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
気の弱いことをいうもんじゃあない、私はこれから加州へ行って、少し心あたりがあるんだし、あそこへは先へ行って待合わせている者がある。そうしちゃあいられないんだから、また逢おうよ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)