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引手茶屋
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ひきてぢやや
殊に、その
引手茶屋には、
丁度妙齡になる
娘が
一人あつて、それがその
吉原に
居るといふ
事を、
兼々非常に
嫌つて
居る。
娘は
町へ
出度いと
言ふ。
本人は、
引手茶屋で、
勘定を
値切られた
時と
同じに、
是は
先方(
道具屋の
女房)も
感情を
害したものと
思つたらしい。
然うすると
此方は
引手茶屋の
女房、
先方も
癪に
觸らせたから、「
持てますか。」と
言つたんだらう。
持てますかと
言つたものを、
持たれないと
云ふ
法はない。
三社樣の
御神輿が、
芳原を
渡つた
時であつた。
仲の
町で、
或引手茶屋の
女房の、
久しく
煩つて
居たのが、
祭の
景氣に
漸と
起きて、
微に
嬉しさうに、しかし
悄乎と
店先に
彳んだ。