引剥ひっぱ)” の例文
乱箱みだればこたたんであった着物を無造作に引摺出ひきずりだして、上着だけ引剥ひっぱいで着込きこんだ証拠しょうこに、襦袢じゅばんも羽織もとこすべって、坐蒲団すわりぶとんわきまで散々ちりぢりのしだらなさ。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と云いながら、無理無体に泥坊のかぶっていた頭巾を引剥ひっぱぐと、面目ないから下を向いて居りまする。
……儲けるどころか、対手方あいてかたに大分のかりが出来た、さあどうする。……で、損料……立処たちどころに損料を引剥ひっぱぐ。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と布団を引剥ひっぱいで見ますと、今年二十五になります現在おのれの実子早四郎が俯伏うつぷしになり、のりに染って息が絶えているのを見ますと、五平は驚いたのなんのではございません、真蒼まっさおになって
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
座敷で衣物きものが脱げないなら、内で脱げ、引剥ひっぱぐと、な、帯も何も取られた上、台所で突伏つッぷせられて、引窓をわざと開けた、寒いお月様のさす影で、恥かしいなあ
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いやなら無理にお願い申しませんよ、それじゃア私の金主きんしゅ八木やぎさんから拝借した三円のお金を、今損料屋が来ておっかさんのている蒲団を引剥ひっぱぎにかゝったから、お気の毒だと思い、立替えたが
銀行は同一おなじ取引の資産家だから、出掛けに、捨利すてりで一着に及んだ礼服を、返りがけに質屋の店さきで、腰を掛けながら引剥ひっぱぐと、江戸川べりの冬空に——いいかね——青山から
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と無理やりに女房の着物を引剥ひっぱいでこれを着て出掛けました。
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
脱ぐとうすものの襟が、肉置ししおきのほどの頸筋えりすじかかって、すっと留まったのを、貴婦人の手が下へ押下げると、見る目にはいじらしゅう、引剥ひっぱぐように思われて、裏を返して、はらりと落ちて
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)