引傾ひっかた)” の例文
見よかし羆の袖を突出し、腕をあごのあたりへ上げざまこまぬいた、手首へつら引傾ひっかたげて、横睨よこにらみにじろじろと人を見る癖。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
半纏の肩から小児こどもの顔を客の方へ揉出もみだして、それ、小父おじさんに(今日は)をなさいと、顔と一所に引傾ひっかたげた。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蛇目傘じゃのめを泥に引傾ひっかたげ、楫棒かじぼうおさえぬばかり、泥除どろよけすがって小造こづくりな女が仰向あおむけに母衣ほろのぞく顔の色白々と
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くちばし引傾ひっかたげて、ことんことんと案じてみれば、われらは、これ、余りたちい夥間でないな。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くちばし引傾ひっかたげて、ことん/\と案じて見れば、われらは、これ、余りたち夥間なかまでないな。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
はてしがないから、おおきな耳を引傾ひっかたげざまに、トてのひらを当てて、燈明の前へ、その黒子ほくろを明らさまに出したていは、耳が遠いからという仕方に似たが、この際、判然はっきり分るように物を言え
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山へあがったというではなし、たかだか船の中の車座、そんな事は平気な野郎も、酒樽の三番叟さんばそう、とうとうたらりたらりには肝をつぶして、(やい、此奴等こいつら、)とはずみに引傾ひっかたがります船底へ
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
五徳をって引傾ひっかたがった銅の大薬鑵おおやかんの肌を、毛深い手の甲でむずとでる。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と尻とともに天秤棒を引傾ひっかたげて、私の目の前に揺り出した。成程違う。
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)