うまや)” の例文
それをあなたは泊めようというんですか。ここは宿屋ですか。食物と寝所とを私にくれると言うのですか。あなたの所にうまやでもあるのですか。
手本てほんもとにして生意氣なまいきにも實物じつぶつ寫生しやせいこゝろみ、さいは自分じぶんたくから一丁ばかりはなれた桑園くはゞたけなか借馬屋しやくばやがあるので、幾度いくたびとなく其處そこうまやかよつた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ところが、どこから聞いて来たか、平太と郎党の木工助が、夜明け方、うまやの蔭で、しきりと、わたくしの陰口かげぐちをきいているではございませんか。
うまやも今柿の木の植っているところにあった。骨格たくましい人だが、子供と反対に年々小さくなる傾向がある。着物が大きくなるということは初めて聞く。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
うまやにおいや牛乳の臭いや、枯れ草の臭い、及び汗の臭いが相和あいかして、百姓に特有な半人半畜の臭気を放っている。
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
うまやの裏でも通りかかって、屁でもプッと落すと、馬がコトリとやるんだからね。きまりのわるいのわるくないの。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
菊枝は、うまやに投げ込む雑草を、いつもの倍も背負って帰って来た。重かった。荷縄になわは、肩にただれるような痛さで喰い込んだ。腰はひりひりと痛かった。
駈落 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
自分で馬をうまやにつなぎ、それから家の中にはいると妻は走り出て来て、ぷんぷん怒って言いました。
安死術 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
行つて見ると納屋でなくうまやである。馬がゐないので厩の屋根裏へ板をならべた藁置き場であつた。
札幌時代の石川啄木 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
うまやの枯草の中にかくして置く、いゝ馬だなあ、乳もしぼれるかいと云ふと顔いろを変へてゐる。
税務署長の冒険 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
私みたいに不幸ふしあわせなものはないぞね、わらの上から他人の手にかかって、それでもう八歳やッつというのに、村の地主へ守児もりッこの奉公や。柿の樹の下や、うまやの蔭で、日に何度泣いたやら。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(按)翁の鹿兒島に歸るや、自分の賞典祿を費用に當てゝ學校を城山のふもとなる舊うまや跡に建て、分校を各所に設け專ら士氣振興を謀れり、右綱領は此時學校に與へたるものなり。
遺教 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
今、二、三の例を挙ぐれば、夜中不時に起きて家を一周し、またうまやに至りて馬に乗り、また屋上にのぼりて仕事をなしながら自らこれを知らず。また、かつて人あり。夜中、一友来訪す。
妖怪学 (新字新仮名) / 井上円了(著)
小翠は衣冠束帯いかんそくたいして宰相に扮装したうえに、白い糸でたくさんなつくりひげまでこしらえ、二人の婢に青い着物を着せて従者に扮装さして、うまやの馬を引きだして家を出、作り声をしていった。
小翠 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
初秋や朝顔さけるうまやにはちさき馬ありあり牛あり
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ウイリイはうまやへ行って
黄金鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「どこでもいいから泊めて下さい、」と男は言った、「物置きでも、うまやでもよろしいです。一室分の代は払いますから。」
鶏頭の血のしたたれるうまやにも秋のあはれの見ゆる汽車みち
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
彼はこのシャフォー街の居酒屋にやって来る前に、自分の馬をラバールの家のうまやに預けに行ったのだった。
宿屋では麦は馬に食われるよりうまやの小僧どもの飲みしろになってしまうことを、よく見かけますからな。
うまやはどこにありますか。」