屋並やなみ)” の例文
屋並やなみに商家の続いたサン・ミッシェルの並木街まで引返して行くと、文房具を並べたある店の飾窓が岸本の眼についた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
くるまほろふかくしたが、あめそゝいで、鬱陶うつたうしくはない。兩側りやうがはたか屋並やなみつたとおもふと、立迎たちむかふるやまかげみどりめて、とともにうごいてく。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
人の心を明るくさわやかにそそるように、屋並やなみの向うからさしのぼった月の光の中を明るい影が動いて行きました。
まだ、ろくに屋並やなみも揃わないうちに、信長は、馬市うまいちを立てさせ、他国の相場以上に、どしどし名駿めいしゅんを買い上げた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今までひろびろしていた堀端の眺望からにわかに変る道幅の狭さに、鼻のつかえるような気がするばかりか、両側ともに屋並やなみそろわない小家つづき、その間には潜門くぐりもん生垣いけがき建仁寺垣けんにんじがきなどもまじっているが
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
たか屋並やなみ不思議ふしぎひさしにてりかへし
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
此処ここからはもう近い。この柳の通筋とおりすじを突当りに、真蒼まっさおな山がある。それへ向って二ちょうばかり、城の大手おおてを右に見て、左へ折れた、屋並やなみそろった町の中ほどに、きちんとして暮しているはず。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)