尻眼しりめ)” の例文
る/\うちあやしふね白色檣燈はくしよくしやうとう弦月丸げんげつまる檣燈しやうとう並行へいかうになつた——や、彼方かなた右舷うげん緑燈りよくとう左舷さげん紅燈こうとう尻眼しりめにかけて
よし子は顔を画に向けた儘、尻眼しりめに三四郎を見た。大きなうるほひのあるである。三四郎はますます気の毒になつた。すると女が急に笑ひ出した。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と一句に力をめて制する母親、その声ももウこう成ッては耳には入らない。文三を尻眼しりめに懸けながらお勢は切歯はぎしりをして
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
その配下のものが気負い立つのを彼は尻眼しりめにかけ、足許あしもとの砂を蹴りつけながら云った。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
と、小さいあごを出し、老婢がこれに対し何かあらがう様子を尻眼しりめにかけながら
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
蠍は大烏を尻眼しりめにかけてもう泉のふちまでって来て云いました。
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ト云懸けてお勢を尻眼しりめに懸けてニヤリと笑ッた。お勢はお勢で可笑おかしく下唇したくちびるを突出して、ムッと口を結んで、ひたえで昇を疾視付にらみつけた。イヤ疾視付ける真似まねをした。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
高い男は中背の男の顔を尻眼しりめにかけて口をつぐんでしまッたので談話はなしがすこし中絶とぎれる。錦町にしきちょうへ曲り込んで二ツ目の横町の角まで参った時、中背の男は不図ふと立止って
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)