小箪笥こだんす)” の例文
小箪笥こだんすの上に飾つた箱の中の京人形は、蠅が一斉にばら/\と打撞ぶつかるごとに、硝子越がらすごしながら、其の鈴のやうな美しい目をふさいだ。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
床の間には、小箪笥こだんすが置いてあって、その側には、驚く程沢山な本が積みかさねてあった。辰子は、早速その本の一冊を借りやうと思った。
(新字旧仮名) / 素木しづ(著)
「枕許の小箪笥こだんすの上へ置いて、これから二人で見ようと言つてをりました。私はそのまゝ小用に立つて戻ると——あの有樣で」
母親は道夫のために小箪笥こだんすからおやつの果物くだものをとりだして、紫檀したんの四角いテーブルのうえへならべながらいった。
四次元漂流 (新字新仮名) / 海野十三(著)
盗み出したのは納戸にあった小箪笥こだんすで、その中から雑用金と銀金具物ぎんかなぐものなどを取り箪笥は屋敷内へ棄てて行った。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
小箪笥こだんす、と手をかけてぐっと引く。軽い所へ、錠がかかって居たからかたかたと音を立てたが、それと共に
相馬の仇討 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
樹木の多い場末の、軒の低い平家建の薄暗くじめ/\した小さな家であつた。彼の所有物と云つては、夜具と、机と、何にもはひつてないきり小箪笥こだんすだけである。
哀しき父 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
それは、来客用の寝室らしく、寝台と小卓と二脚の椅子と、小箪笥こだんすほかには何もない至極しごくアッサリした部屋であった。人間の隠れる場所は寝台の下を除いてはどこにもない。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼夜彼女がて来てくれたほおずきは、あまり見事みごとなので、子供にもやらず、小箪笥こだんす抽斗ひきだしに大切にしまって置いたら、鼠が何時の間にかその小箪笥をうしろから噛破って喰ったと見え
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
小箪笥こだんすなんぞ買って、お金まで付けてったというじゃないの、いまに赤んぼが生れたら引取って育てるなんて云うんでしょ、あたしだったらおたみなんかびりびりにひっちゃぶいてやるわ
寒橋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そしていつもの習慣通りに小箪笥こだんすの引出しから頸飾くびかざりと指輪との入れてある小箱を取出したが、それはこの際になって何んの用もないものだと気が付いた。クララはふとその宝玉に未練を覚えた。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それよりもむしろ竹細工の仕事の方が、この島の産物として認められてよいでありましょう。幕末頃、即ち千石船の出入りが盛であった頃、小木おぎの港は船で用いる小箪笥こだんすを作るので有名でした。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ちやうどその時は、アデェルが私の手をとつて部屋をあちこち連れて歩いて、美しい本だの壁にとりつけた小卓こづくゑ小箪笥こだんすの上の飾物だのを見せてゐたのだが、私たちは素直すなほに主人の言葉に從つた。
「碁を打つ前にかぞえて納めた小箪笥こだんすの中、三百両の不足じゃ」
ショールなんかにくるんで小箪笥こだんすのうしろに隠してあったのだ。もっともこれは破片かけらを一つだけ持って来たので、高さ一尺ばかりの石膏像のこわれたものが、すっくりそこにあったのだがね
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼はかく小箪笥こだんすを売つて、洋服を送つてやることにした。そして
哀しき父 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
「そこに物入れの小箪笥こだんすがある」と和助は云った
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
深喜は小箪笥こだんすから菓子を出して
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)