寐覚ねざめ)” の例文
旧字:寐覺
をののみわすれたものが、木曾きそ碓氷うすひ寐覚ねざめとこも、たびだかうちだか差別さべつで、なんやまたにを、神聖しんせい技芸ぎげいてん芸術げいじゆつおもはう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何升なんしょう食ったか自分にもわからぬがとにかくそれがためにその日は六里ばかりしか歩けなかった。寐覚ねざめの里へ来て名物の蕎麦そばを勧められたが、蕎麦などを食う腹はなかった。
くだもの (新字新仮名) / 正岡子規(著)
ああしてむつましう一家族で居つて、私たちも死水を取つて貰ふつもりであつたものを、僅の行違から音信不通いんしんふつうなかになつて了ふと謂ふは、何ともはや浅ましい次第で、わしも誠に寐覚ねざめが悪からうと謂ふもの
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そうしてしまえば、ねだ下、天井裏のばけものまでもない……雨戸の外の葉裏にいても気味の悪い芋虫を、銀座の真中まんなか押放おっぱなしたも同然で、あとは、さばさばと寐覚ねざめい。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
惘然ぼうぜんと休み居る内、ふと今日は十月十五日にして『ホトトギス』募集の一日記事を書くべき日なる事を思ひ出づ。今朝寐覚ねざめにはちよつと思ひ出したるがその後今まで全く忘れ居しなり。
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
斧と琴と菊模様の浴衣こそ菊枝をして身を殺さしめた怪しのきぬむすめが歌舞伎の舞台でしばしば姿を見て寐覚ねざめにもおもかげの忘られぬ、あこがるるばかり贔屓ひいき俳優やくしゃ、尾上橘之助が
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)