富豪かねもち)” の例文
すべ富豪かねもちといふものは、自分のうちに転がつてゐるちり一つでも他家よそには無いものだと思ふと、それで大抵の病気はなほるものなのだ。
青磁の皿 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
家並みもそろっているし、富豪かねもちも多いし、人口は一万以上もあり、中学校、農学校、裁判所、税務管理局なども置かれた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
『淀屋とか。うむ、三都に聞えた富豪かねもちじゃの。さてこそ、うき大尽も、淀辰よどたつの金の光の前には見下げ果てられたか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まアいサ、酒でも飲みましょう」と大友はしゃくを促がして、黙って飲んでいると、隣室にる川村という富豪かねもち子息むすこが、酔った勢いで、散歩に出かけようと誘うので、大友はおしょうを連れ
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
支那のことばつかいます、ジャワにおれば、ジャワの詞をつかいます、私がどこの者であるかは、あなたの推測にまかせますが、私の家はその土地でも有数な富豪かねもちで、父には七人のめかけがあったのです
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
今話した富豪かねもちという奴がやっぱり昔の大名と同じで、領土の代りに資本を持っている大仕掛けの機械を持っている。資本と機械とがあればもうわれわれ労働者の生血を絞り取ることは容易いものだ。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
美術骨董は多くの場合、富豪かねもちの眼をたのしませる外に、財産として子や孫に残す事が出来るからである。次ぎにはそろ/\音楽を始める。
何う世の荒波を泳いだか、一万円近くの資産を作つて帰つて来て、今では上塩山第一の富豪かねもちと立てられる身分である。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「ですから、父上のお顔で、富豪かねもちを紹介して下さい。曹家は、財産こそないが、遠くは夏侯かこう氏の流れを汲み、漢の丞相曹参の末流です。この名門の名を利用して、富豪から金を出させて下さい」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自家うちは、富豪かねもちだい」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
すべ富豪かねもちといふものは、自分のうちに転がつてゐるちり一つでも他家よそには無いものだと思ふと、それで大抵の病気はなほるものなのだ。
郡役所と警察署と小学校とそれにおもだった富豪かねもちなどの注連飾しめかざりがただ目に立った。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
その富豪かねもちも皮肉哲学者に、自家の邸宅やしきを自慢したいばかりに、飾り立てた客室きやくまから、数寄すきを凝らした剪栽うゑこみの隅々まで案内してみせた。
その根本ねもと(青年の名は根本行輔かうすけと言ふので)の家柄は村では左程重きを置かれて居ないので、今でこそ村第一の富豪かねもちなどと威張つて居るが、親父の代までは人が碌々ろく/\交際もない程の貧しい身分で
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
神戸の富豪かねもちもちやんとさういふ型にはまつてゐたから、宴会半ばになると、そろ/\画絹ゑきぬを引張り出して三人の画家ゑかきの前に拡げ出した。
「どうつかまつりまして——」支配人は軽く頭を下げた。この男は長年カアネギーに使はれてゐるだけに、よく富豪かねもちの気心を知つてゐた。
ヰンストン・チヤアチルといへば亜米利加の小説家だが、ある時何かの席で紐育ニユーヨーク富豪かねもちのお嬢さんと隣合せに坐つた事があつた。
今の富豪かねもちが高い金を惜しまないで骨董品を集めるなかには、かうして狡い考へをするのが少くない。唯骨董品ばかりでは無い。
贋物 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
今の富豪かねもちが高い金を惜しまないで骨董品を集めるなかには、かうして狡い考へをするのが少くない。唯骨董品ばかりでは無い。
盗人のように夜でなければ出歩かない擁剣蟹がざみを砂の中から掘出したり、富豪かねもちのように巣に入口を二つ持っていて、その一つを足で踏まれると
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
英国の富豪かねもちにトウマス・ガイといふ男があつた。俳優はしなかつたが、梅玉と同じやうに金を蓄める事は大変好きだつた。
土耳其トルコであつた話である。あすこの或る信心深い富豪かねもちが大病にかゝつて死にかけたので、一人息子を枕もとに呼んで、遺産の始末を細々こま/″\と話した。
世間の富豪かねもちで、乃公おれは芸術が好きだといつて、それを自慢にするてあひは大抵先づ美術骨董へ手を出す事にきまつてゐる。
あいつらはおれ達の眼をうまくくらまかしたというので、たいした評判を取り、おかげであの画は途方もない値段である富豪かねもちの手に買い取られたそうだ。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
それから二三日経つて、メリー・ガアデン嬢は、富豪かねもちのアンドリウ・カアネギー氏に出会つて、この話をした。
そこらの富豪かねもち達もよく聞いて置くがいゝ。カアネギイのする事に、何一つ間違つた事はござらないが、安心なのは学者など余り友達に持たない事でござる。
鉄眼は一切経の版行を思ひ立つと同時に、それは一人や二人の富豪かねもちの手で出来上るものではない。一体お経を出版すると、それに関係した人達は、その功徳によつてきつと浄土へ生れる。
茶話:12 初出未詳 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
ニユーヨークに富豪かねもちの未亡人で結構な温室をもつてゐる女があつた。